今も昔も「キャリア」については、多くの人の関心の中心であり、いろいろ言われることがあるけどいったんなんだろうか。
非常に一般的に言うなら「キャリア」=「企業ブランド」というイメージを持つ人が多いのではないだろうか。
「**に就職しました!」
「よかったね!**ならこれからでも大丈夫だ!」
・・・
こういう会話を大人の中でもよく耳にすることがある。はたして、この会話にどれだけの真実があるだろうか?
「就職=企業選び」はある意味間違いではないが、終身雇用の前提を持つ人にとっては、企業を選んだ段階で、キャリアについてもう考えなくてもよいとある程度思っているのではないだろうか。
いつぐらいからかは忘れたが、最近は有名な企業のリストラ話は、ニュースで見ても誰もびっくりしなくなった。なのに「**だから大丈夫?」というのは、冷静に考えるとおかしい。
「キャリア」については、職業柄セミナーや国内外の大学の講義も含めいろいろなところで話す機会を持っているが、客観的にこれがキャリア論でこのポイントさえ押さえておけば問題がない、というものは残念ながら存在しないと思う。
当然のこととして個人の個性や能力差が非常に大きい分野なので、すべての人にグローバルキャリアとか「UP or OUT」の方針で働けというのはナンセンスです。
少々前になるが、日本でも欧米型の成果主義を導入した企業は多かったが、実際に今も残っているところはそれほど多くない。職業には合目的な目標だけで解決できるものではなく、分野や生活習慣も含め多様な要素が、基準が設定された業績だけで判断されるシステムとは相性が合わない部分があるのは当たり前である。
職業にはいろんな要素があり、合目的な結果を出すことは共通のルールであるが、その範囲や度合、ペースや進め方には差があってしかるべきである。
社会や国家全体としてみた場合には、もう少し事情は複雑になり、雇用の創出、産業の育成、安定した社会の醸成というコミュニティ全体としての最適化という視点も必要である。
原点に戻れば、非常に教科書的な見方ではあるが、「職業」には以下の要素から考えるべきである。
(1) 収入(生活の基盤として)
(2) やりがい(個性や能力の発揮)
(3) 社会貢献(人間の欲求と社会的生き物として)
それ以外にも、社会的なステイタス、つまりカッコよさとか、家族や地域とのつながりという面もあるだろう。
また必ずしもポジティブな面だけでなく、自分がやらないと家業がつぶれるとか、自分の意思とは関係なく、諸事情によってその職業を選択しているケースも世の中にはたくさんあると想像される。
最近はこれらに加え「親や近親者の希望」という要素もあるようである。特に新卒の場合、親がここはよくて、ここはダメというケースが多く出ており、反論を恐れずに言うなら、その親の認識は過去の常識に照らしたものであり、指摘は必ずしも正しくない。
そういう意味では親ももう少し勉強しないと時代遅れになり、周囲に悪い影響が及ぶことも考えられる。
そういった中、私がセミナーや講義で「キャリア」について話す時のポイントを要約すると以下のとおりである。
(1)キャリアは人生のトータルで考えるべし
新卒の場合20代前半から始まり、70歳ぐらいまで考える。全部で40-50年間、キャリアの本当の悩みは、40歳を超えてから切実になってくる。
(2)企業と個人を分離して考える
企業名ではなく、自分の価値観と能力で「職種」を選ぶべし。
(3)最初のうち(40歳ぐらいまで)に成長できる環境を選ぶべし
若いうちは自分の将来のために投資する。前半のキャリアでの実績や実力で、後半のキャリアが大きく変わる。
(4)大きな世界観を持つべし
できれば世界の中での自分の位置づけを意識すべし。また、業界、企業分析は必要以上にやりすぎない。また、過去の常識で判断しない(終身雇用、総合職優位などの幻想を捨てる)。
最初の企業選択、つまり新卒での就職の場合、社会での経験や知識の不足があるのでいたしかたないところであるが、ほんのわずかな知識を、非常に主観的な判断で企業を選択する。その結果選択されるのは、テレビCMによく出ていて、市場で製品やサービスを出しているいわゆる大企業が中心となる。
またいわゆるステレオタイプとよばれる行動パターンにより、過去の美人投票の結果を踏襲するように、過去の人気が増長されて時間とともに偏りが強くされるという結果もある。
人生の選択は、自分の人生なので自分で判断することが正しい姿である。それをなるべく公平に物事を見て考え、正確な情報を提供することでサポートすることが自分の仕事であり、全ての大人の役割だと思う。