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2019年 世界はどう動く?(新年の雑感)

毎年年始のこの時期に、今後一年間どうなる?のような記事を書いています。

今年もざっくばらんに気の向くままですが、現時点で自分が考える予想される1年についてまとめてみようと思います。

<<目次>>

・世界の大きな経済の流れ

・二大大国ー中国とアメリ

・我々は何をすべきか?

<世界の大きな経済の流れ>
昨年2018年は一年を通じて大きな動きはなかったという印象です。気候変動によるものか日本を含む各地で自然災害にあいました。科学が進歩してある程度予測できるようになったと言いつつも、まだまだ自然の力の前には人類ははかない存在のようです。

アメリカ、ヨーロッパ、アジア、アフリカ、中南米とすべてにわたって新しいスキームが誕生したと言える大きなイベントはなかったように思えます。個人的には心配してずっと見ていたヨーロッパもそれほどそれほど大きな混乱はなかったようです。
ただしEUが求心力を失って機能不全になるという根っこにある懸念は残ると思います。崩壊する、というより機能不全になる、という確率のほうがはるかに高く、これは議会政治や民主主義が根本的に内包する構造的な課題です。

ヨーロッパの局所的ではあるが影響のあると思われるイベントは、間近に迫ったイギリスのEU離脱です。今年2019年の3月29日が離脱に期限になりますが、イギリス首相であるテリーザ・メイ氏は国内の政党間での利害調整に大変苦労しており離脱条件について議会のコンセンサスが得られずにいます。責任ある担当者が何度も代わり「サジを投げる」状態に近くなっており、にっちもさっちもいかないように見えます。

どのような結末であれ、イギリスの離脱は北アイルランドなど局所的で限定的なものですが、その後ヨーロッパ全体に「EUはもはや失敗だ!」というメッセージになることが中長期では問題となってきます。


イギリスで見られたように多くの移民や難民が到来し、街中の外国人比率はどんどんあがりました。これが国内の雇用問題、移民のコスト負担の問題となり、”ナショナリズム”というインフルエンザのような拡散力の強い思想となってヨーロッパの他の国々に広まることで、イギリスと同様の状況にいきかねないです。実際にドイツでさえも移民反対を掲げる政党が得票を伸ばす中、国内世論の調整と連立政権内でのコンセンサス形成は大変難しいものになっています。

また別の視点ではイギリスのEU離脱は間接的に、大きな経済圏の再編成を促すかもしれません。大英帝国という過去の影響を失いつつもイギリスはアメリカのルーツということもあり現在でも金融界を中心に一定のプレゼンスを持っています。そのイギリスがEUから離脱したということはアメリカもヨーロッパ大陸とのコネクションが弱くなることを意味します。それはくしくもトランプ大統領保護貿易というポリシーとも重なりEUアメリカの構造が少しずつ出てきています。米中の貿易戦争という側面に隠れていますがEUアメリカでも双方向で関税を引き上げるという大人げない戦いをしています。

元々EUアメリカという大きな経済大国に対して規模で対抗する意味合いも多少持っているので、そういう意味でクッションみたいな存在であったイギリスがEUからいなくなる意味は世界の勢力図争いにおいて少なからず影響があると思います。
直近トランプ大統領NATOからの離脱を示唆していますが、これもヨーロッパの特に大陸側とアメリカの距離を遠くすることを意味しており、変な方向には行ってほしくないというのが率直な感想です。


株式、債券、為替の動きは全体としてマイルドでした。11月からGAFAGoogleAppleFacebookAmazon)などのIT企業の株価が暴落し、いったん世界市場全体の下落を招きましたがこれは想定内といえるかもしれません。そもそもこれらの企業の株価は将来の業績を見込んでおり、どう考えても永遠にこれまでの成長率を続けることができないので、そろそろこの辺で冷静になったとでもいえましょうか。
株式や債券、不動産などは相場全体として、相変わらずの行き場を探す過剰流動資産による恒常的なバブル状態になっています。実体経済と金融資産の乖離はもはや限界点だという方も多くいます。GAFAはその一時的な投機先と見られているのであれば、今後は困難が待っているかもしれません。

為替はトランプ大統領の突然の発言で急に上がったり下がったりするかもしれません。
現時点では日本円は他のどの通貨と比べても安定とみられているようです。これは昨年と変わらない状況ですが、消去法的に日本が相対的にリスクが少なく「有事の円買い」基調が続いているからです。

商品相場では原油価格は2019年の前半は高めに推移しましたが、後半は下落基調でした。これは中東をはじめ産油国にとっては悪いニュースには違いありませんが、一朝一夕で変わる中東情勢で上がったり下がったりするので短期では需給関係だけで予測するのは難しいでしょう。基本的には毎年増産しているアメリカのシェールオイルシェールガス原油の安定共有を可能にします。これにより中東の国々の世界におけるプレゼンスを相対的に小さくし、これが中東内での新たなパワーバランスの変化という極めてセンシティブな事情につながります。

世界全体での消費需要やエネルギー需要などを考慮すると、石化燃料の総需要量は順調に増えていきますが、アメリカや中国で確認されているシェールオイルの埋蔵量と採掘量が増えるにつれて市場心理的にはどこかで重い天井があるように思えます。

 

最後に地政学的リスクがありそうなところを少しピックアップしておこうと思います。

 

北朝鮮は中国になかば見捨てられて行き場を失っています。これまでは他国とけんかしても中国という経済的、軍事的バックアップがあったので威勢が良かったところがありますが、これがほぼ期待できないとなると、どのような結末かは分かりませんが、韓国、中国、もしくは欧米のどこかと平和的な関係を結ぶしかなくなります。最も可能性が高いのは同民族の韓国との提携、または合併です。しかし国内でも多くの問題を抱える韓国にとっては率直に言って負担以外の何物でもありません。かつて韓国の首相がドイツのメルケル首相に東西ドイツ統一時の負担について質問した時に、その要する時間や金額を聞いて卒倒しそうになったのは当然のことです。現在の北朝鮮が持っている様々な負債と韓国の経済的な余力を考えると、おんぶして両方共が倒れて怪我する状態に近いと想像します。


次に不確定な未来があるのはトルコです。オスマン帝国復興を目指すカリスマのエルドアン大統領のかじ取りが怪しくなると思います。理由はこれまでなんだかんだ言っても経済的成長があったことと、仮想の外敵によって国民をまとめていましたが自国通貨の暴落、高いインフレや失業率などが重なるとさすがに国民も黙っていません。

 

上記の状況はロシアでも現れるかもしれません。これまでカリスマで君臨してきたプーチン大統領も、トルコと同様自国通貨の暴落、高いインフレや失業率がすすみ国民の生活が今以上に悪くなるとこれまでのようには行かない可能性があります。

現在もロシアは天然資源頼みの部分が大きく、原油などの市況により国益が決まるという他力本願です。ここから工業化へと脱却を目指してますが、残念ながら大きく変わる様子は見えません。

 


上記を状況を鑑みて、今年2019年全般は天災や大きな争いがなければ全体として昨年同様「そこそこの平和、そこそこの好況」ように思えます。
ただしこれは現状がよい状態で回っているわけではなく、適切な対策やシステムも見つからないままモラトリアムでだらだら時間が過ぎていくとも解釈できます。

どこの国も議会も特効薬が見つからない中、本来は問題の原因から解決すべきですが、これらは通常痛みを伴うため先送りにしがちであり将来に禍根を残しています。


あるべき姿としては問題は小さなうちにウミを出し切るくらいの対策を取ったほうが、傷は軽症で済みます。しかし残念ながら大きな病気にならないと病院に行かないのと同様に、問題が大きく顕在化して初めて取り組みその時には相当にお金も時間もかかる、というのが歴史的にみれば普通かもしれません。
ちょっと残念な結論ですね。

 

<二大大国ー中国とアメリカ>
アメリカの動向はある意味トランプ氏という良くも悪くも大変ユニークでPR好きの大統領がいるため予測はある程度可能です。むしろ不確定要素は分かりやすいけど、本当にどこまでやるの、つまり「まじか?」みたいなところにどこまで国民と周囲がついてこれるのか、というのが不確定要素です。

昨年2018年11月のアメリカ大統領の中間選挙の結果、アメリカ議会は上院・下院で共和党民主党がそれぞれ過半数を取る「ねじれ」状態になり、トランプ大統領は当然動きにくくはなります。現時点では次期大統領選挙で再選されるという予想のほうが若干多いようですが、民主党の反発、共和党の中での足並みの乱れ、そしてブレインを含むトランプ氏のチームでの不協和音により安定した基盤を失い、PRばかりが目立つようになればこれまで支持層であった中間層もこのまま彼を支持するかどうかは分かりません。
トランプ大統領の方針を一言で表すと「アメリカだけが良ければよい。他の国は自分たちでなんとかしてね!」というスタンスです。アメリカは歴史的にも介入主義と孤立主義をシーソーのように行ったり来たりしている中で、現在は孤立主義にいるところです。

彼にとっての最大の懸念事項は自身の再選がどうなるか、でしょう。次の選挙の得票を意識して米国民の中間労働層、キリスト教福音派の耳に聞こえの良い政策をPRしつつ、これらを切り札のカードとして対外交渉するという彼独特のビジネスマンの感覚で国政を行っている印象があります。
したがって乱発しがちな大統領令そのものを見るというより、これは選挙民に対するPR用で、実際はこれらを交渉のカードとして他国との条件交渉に利用するということを意識的に行っているように見えます。

このあたりは大義名分と対面や体裁を気にする最近の大統領との大きな違いで、タブーとだけど国民の本音(=「アメリカが良ければよい!」)を語るスタイルは、過去ではレーガン元大統領に近いのではないかと思います。レーガン元大統領は国民に聞こえのよいシンプルな政策を展開し人気もありましたが、その後の国家財政のことを考慮すると評価は決して高くなく、トランプ大統領も同じパターンに陥る可能性があります。

 



次に中国ですが、数字の上では他の先進国と比べても高い水準の経済成長をしているように見えます(注、中国の実際のGDPは公表数字よりも少ないことは大体わかっている)。しかし一時期の勢いがないことは明らかであり、そろそろ安定期に入るのはこれまでの20年余りの成長期間を考えると自然なことです。
人々の生活は都市部を中心にかなり豊かになりました。都会に行くと若者はiPhoneを持ちおしゃれをして、まるで東京のようです。インターネットのサービスの利便性はもはや世界一と言ってもよいでしょう。ネットでの決済の普及率は世界のトップクラスで、現金を持っていると買い物の時に支払いに困るくらいです。(WeChatPayとAliPay

 

先進国と比べればまだ高い成長率を持っていますが、不良債権の問題は全く解決していません。これは日本のバブル崩壊後とほぼ同じ状態ですが昨年中国が取った経済政策も1990年代の日本と似ています。本来は不良債権だらけの傷んだバランスシートの処理をしなければならないのですが、これには痛みが伴うため先送りしがちになります。2018年の途中までは不良債権処理を意識して動いていたようですが、2018年の途中から景気の失速により不良債権の拡大と失業問題などの懸念から、財政投資による景気刺激策重視にもどりました。つまり景気重視のために不良資産の整理をいったん棚上げにしました。これは本当は死んでいて終わらなければならない”ゾンビ企業”を延命させることにほかなりません。
1990年代にまさに日本がこれをやって、その後の処理と景気低迷にお金と時間がかかったのは今では誰でも知っていることです。ゾンビ国営企業・国有企業の延命と、不良資産化していて正確な金額もわからないアングラマネーの”シャドーバンキング”の問題は中国経済の将来に大きな禍根を残すでしょう。

 

 米中という関係でみると2018年で起こった最も大きな出来事との一つは関税率をお互いに最大25%を課税する貿易戦争です。トランプ大統領は根本的に保護貿易を基本路線としていますが、鉄鋼やアルミなど天然資源から始まり、自動車や電気製品まで幅広く関税をかけはじめました。これは米中のみならずEUに対しても自動車関税を上げて、これはヨーロッパの製造業にとっても大きな痛手です。

しかしこれはアメリカにとっても得策でない面も多々あり、例えばアメリカ人の使うiPhoneはパーツを中国に集めてそこでアセンブリして完成させてアメリカに輸入していますが、それがスムーズにいかなくなります。中国からアメリカに輸入する際に高額な関税がかかるためにアメリカ人が買うiPhoneの価格が上昇し購買が進まなくなるからです。
現代は孤立した国という単位で物を作っているわけではなく、様々なサプライチェーンをいろいろな国で分担することで製造や物流、貿易が成り立っており、どこかの一点が滞ると全体の流れが悪くなることから結局これはアメリカにとっても回りまわって悪影響となって帰ってきます。
したがって貿易戦争については、遠からず各国が大人の対応をして挙げたこぶしをどうにかおろそうかと着地点をさぐることになります。

 


この貿易戦争を別の視点で見てみると、ハイテクを中心とした覇権争いの側面が見えてきます。ハイテク産業はインターネットサービスやスマートフォンなどの個人用品やサービスだけの問題でなく、国防や軍事にも関連してきます。実際にサイバーセキュリティは大きな国防問題であり、そのためのインフラやルール作り、個人や国家の情報の保護という大きなテーマも含み、そういう点でもアメリカはここで中国に負けるわけにはいきません。

もちろんビジネスでもアメリカで開発したテクノロジーを中国が拝借して廉価で作り世界中で売りまくりシェアを取ることは阻止したいです。中国は国内に約14億人の消費者がおり一国だけ欧米プラス日本の人口を超えています。この経済規模をバックに大量設備投資、大量生産、海外への輸出、世界での覇権を取るというシナリオを展開することが出来るので個人のスマホの製造、各国の通信インフラの取得、ビジネスでのシェア獲得がシナリオとして描けます。
この覇権争いの土俵で、どこの国がデファクトスタンダード(標準)を取るかはアメリカにとって大きな問題です。

 

 

 

<我々は何をすべきか?>

日本を見てみると2018年は、まあまあ、というところでしょうか。特に何か良かったわけでなく、特に何か悪かったわけでもありません。決して嫌味ではなくこの国は平和だと思います。すごく良いこともない、だからなんかよくわからない、というのは平和な証拠です。
景気は2018年は総じて悪くはなかったです。日銀はインフレ2%をターゲットにして緩やかな物価少々、賃金の上昇、消費の活性化を目指していますが残念ながら昨年もそれ以前同様インフレターゲットは達成できず、そしておそらく今年も達成は難しいと思います。
しかし消費者としてはそれほど物価も上がらず、同じように生活が送れているので、大きな好況感もない代わりに生活水準は保てています。
2019年は国内については大きなイベントがない限りは、良くも悪くもこのまま好景気を持続します。ただし米中の貿易戦争は確実に世界経済に悪影響を及ぼすので、これは同じエコシステムの所属する日本も無視することはできません。残念ながらグローバル経済がつながっている世界では、どこかの国や地域で問題が起こると程度の差はありますがその影響は必ず自分のところにも回りまわってきます。

トランプ大統領のかじ取りは日本にも大きな変化を強いられます。もっとも大きかったのはまとまりかけたTPPから就任直後に脱会を宣言されたことです。アメリカは一刻でも経済規模は大きく離脱は大きな痛手です。しかしその後TPPはその後アメリカ以外の11か国すべてで”TPP11”を作り昨年末には合意し実行されています。(まだ全部の国ではない)トランプ大統領はTPPではなく二国間協定であるFTAなどで国ごとの関係を構築しようとしていますがこれは事務的にも非常に非効率です。その観点から進化したTPPのような地域包括の経済制度にアメリカがどう対応するかは分かりませんが、どこかで妥協点をみつけて突然加盟するということもないとは言えません。

日本は米国からの一方的な関税アップを言われている中、EUとはTPPに近い包括条約を結んでいます。「日本・EU経済連携協定」という名前で昨年締結され2019年2月1日に効力が発生します。内容はEUと日本の間のEPA(Economic Partnership Agreement)なのですが相手がEUなので二国間ではなくEU全部の国と日本との協定ということになります。
トランプ大統領はこの例のように「America First!」を強調しすぎると、周囲に経済連合がたくさんできて自分だけ不利になるということをそろそろ分かり始めたなら、TPPになんらかの形で加わってくることもそれほど遠くないかもしれません。

 

さて最後になりますが、日本が独自で主体的に活路を見出すためにはなにをすべきでしょうか。ここはすでにいろいろなところで何度も言われてきていることでまとまると思います。
具体的には、働きかいた改革による余暇の充実、ベンチャーなどの新規事業の活性化、豊かで子供がたくさん産める社会の実現、などです。やるべきことはずいぶん昔から分かっています。もうそういう議論は置いておいて、誰が、いつ、どのように行うかという時期に来ています。


個人的にはポジティブに以下の課題を解決しなければいけないと思い動こうと思います。

 

(1)創造性を中心とした個性を生かす教育(出る杭をのばす)

(2)ベンチャー振興(新しいものを創る)

(3)社会全体で赤ちゃんを育てる仕組み(子供に明るい社会)

(4)グローバル人材の育成のため人材交流の規模大幅拡大(双方向で)

(5)サステイナブルで自然に優しいエネルギー利用(サイエンスの事業化)

(6)QOLを実現する健康予防のシステム(病気にならない)

(7)シニア人材の活躍の場を創生(ノウハウや経験を生かす)

(8)AI、IoTやRPAなどの導入による人材不足の解消(新しい技術・インフラの活用)

(9)日本独自の文化の見直し(コンテンツの宝庫、観光資源)

(10)シニア向けのローコストの社会(集合住宅、集団介護など)

 

 長くなってしまいましたが、今年もよい年になりますように。


。。。(2019/1/13)