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面接ってどこを見ているの?(ケース面接を含む)

面接ってどこを見ているの?(ケース面接を含む)

たいへんよく聞かれる質問です。でも本当に気になりますよね!
結論から言うと可能な限り全部を見ています。


例えば

表情、挨拶、服装、ふるまい、言葉遣い、話す速度、聞く態度、・・・


多くの場合、話す内容だけを気にして「**を言ったから通った(または落ちた)」と判断しがちですが、そういうこともありますが、必ずしも発言内容だけで決めているわけではありません。

例えば


「学校の勉強は一生懸命しましたか?」


という質問があったときに、


「はい、一生懸命予習復習しました」
「いいえ、あまりまじめな学生とは言えません」


だとどちらも通過するかもしれないし、落ちるかもしれません。
普通に考えれば、一生懸命勉強したほうがよいのですが、フレンドリーで柔軟な人が望まれる場合は、まじめでなくてもよいかもしれません。つまりここでの質問の回答によってのみ合否が決まるのではなく、言っているときの表情やその人の体から出る雰囲気や個性によって総合的に判断します。


この要素は「対人スキル」と言われるもので、面接などでは意外とこの要素が大きな割合を占めます。面接官自体もあまり意識していないことも多いのですが、人として良さそうかどうかという本能的な判断は、結構意思決定に大きな影響を与えます。


特にオンラインの面接だとカメラを通した情報が少ないため、表情からくる対人印象は非常に重要であり、表情の作り方など普段から少し意識しておくと本番の時に固くなりすぎず良いかなと思います。


ちなみにですが対人印象は急にはよくなりませんが(涙)、良い印象を持ってもらうためにはwebカメラに映る明るさは重要で、そのために”リングライト”を使うことは結構効果があると思います。amazonなどで数千円で買えるので、ずっと使えますしその投資は悪くないと思います。


さて話を戻すと、面接では人として総合的に判断するという点で、大きく以下の点が評価の対象になります。


1)人柄や性格が社員としてあっているか
2)質問などに対する受け答えで、コミュニケーションスキルがあるかみる
3)その人の価値観や目標とするゴールなどを明らかにする
4)業務に必要となる思考能力は十分か
5)心身ともに健康か


上記の条件を満たすかどうか見るために、何か質問してその時の回答や態度などによって総合的に判断するので、質問やその回答の内容はそれを引き出すために題材に過ぎないことが多いです。


そういう点では内容の難しさなどが話題になる「ケース面接」も実は同様です。ただこの面接をする会社がコンサルティング会社が主なので、(4)の思考能力というところで論理的思考力や推論の能力の要素だけが際立って高くなるだけです。


実際にはケース面接でも、回答内容で合否が決まるわけではなく、多くの場合回答者の思考プロセスを見ながら、どれくらい観察や洞察があるか、論理的にまとめる力があるかというところが重要で、回答内容や回答のためのプロセス自体に面接官は興味を持ちません。

そういう意味では面接全体でいうと、日ごろからどのように考えたり振舞ったりするかということが大切であり、そこに書いてあるものしか判断対象とならないエントリーシートや文章の自己PRとは別物であると考えたほうが良いと思います。



私は面接官はやっていませんが、人と会う時には顔をよく見ます。表情を見ると実は理解力が露骨に出ることがよくあり、特定の話題に対してどのように感じ、どれくらい興味を持ち、さらにどれくらい理解しているか、というのがある程度わかります。

話題に興味があるかどうかは目の真剣さを見ればわかりますし、理解力はその話題に対して納得しているかどうかというのが、やはり目に現れます。目は様々な情報を提供し、尊敬、羨望のようなポジティブなものから、中傷、軽蔑などネガティブなものまで結構正直に出てしまいます。

 

なんか最後は怖い話になっちゃいましたが、お気軽にセミナーにお越しいただければと思います。

直近は以下のセミナーでお話しするので、ぜひリングライト買ってカメラオンでお越しください(笑)。

◆コンサル&連続起業家&大学教授による2時間で世界を理解する講座
https://www.goodfind.jp/2024/seminar/1531
9/08(木) 18:30–20:30 オンライン(Zoom)

◆【全出題傾向を網羅】MBBケース過去問演習会〜外コン選考前に固めきる〜
https://www.goodfind.jp/2024/seminar/7347
10/03(月) 18:30–20:30 オンライン(Zoom)

◆ビジネスの全体像を掴む。「人気の8業界」まとめて企業分析講座
https://www.goodfind.jp/2024/seminar/5050
9/16(金) 18:30–20:30 オンライン(Zoom)

◆ケース面接対策~McK、BCG等の外資系戦略コンサル志望者向け
https://www.goodfind.jp/2024/seminar/7002
9/12(月) 18:30–21:00 オンライン(Zoom)

 

事業創造力は学べない!?

「事業創造力は学べない!?」

以前にこんな記事を書いたことがあります。

『事業創造力』をどうやって身につけるか? (Goodfindセミナー講師ブログより)
https://goodfind.hatenablog.com/entry/2022/03/08/202534


この記事に対して、そもそも『事業創造力』ということが実感できない、という意見も何人かからいただきましたので、今回はそのお話をしたいと思います。

 

まず多くある誤解からお話すると

 

「分析」=>「事業創造」

 

という式を思い浮かべている人が多いように思えます。これは大きな誤解だと個人的に思うのですが、ちょっと前までビジネススクールでも、上記のトーンでまるで教室の中で分析して戦略が生まれるみたいな話をする方もたくさんいました。

ところがここ20年くらいスタートアップが多くなり、実際に事業を作る機会が増えたことで、こんなに簡単に事業なんて実現できないということがわかり始めて、いわゆる頭でっかちの「なんちゃって起業家」や「なんちゃってコンサル/アドバイザー」がどんどん淘汰されるようになりました。

 

同時に様々な人種が様々な分野で成功したり失敗したりする中で、どうやら事業創造とはそんなに簡単ではなく、また成功確率も学んだところであまり変わらないのではないか?みたいな話も出てきました。

連続起業家として何社も立ち上げて大きくした、と同時にたくさん失敗した経験からお話すると、新規事業を立ち上げる時に教室で学べることもあれば、学べないこともたくさんあります。

実際に世界のビジネススクールでスタートアップ戦略論を話をするときには、「私の講義ではプロダクト開発は学べない!」と最初に宣言します。(マジです)

難しい選考をパスし高い学費を払って有名ビジネススクールに来ている人に対して、これは大きく失望させますよね(汗)。
でも実際に私は今でもそのように思っています。しかしそれは何もできないことかというとそうではなく、「プロダクト開発」は難しいけど、市場規模の予測やうまくいったときの会社の規模、組織の作り方や管理方法、資金調達とIPOなど具体的なものはかなり実務的に解説することができます。

 

前段の話が長くなりましたが「事業創造力」は以下の3つに分解できると思います。

 

事業創造=分析する力+想像する力+実行する力

 

この2番目の「想像する力」の部分が教えにくいところで、前後の2つについては先人たちから学べるところです。

教えにくいのですが、ヒントも存在します。そのヒントというのはだいたい以下のようなものがあります。

 

・アイディアは「遊び心」から出てくる(ドラえもんのポケットのもの)
・未来にあったら無茶苦茶便利なもの(昭和初期の洗濯機)
・絶対に避けたい苦痛を回避する(麻酔)
・たくさんの人が必要なもの(眼鏡)
・なくてはならないもの(上下水道スマホ

 

要は学校で行う勉強とは少し異なるアプローチが必要ということで、このあたりは最近の脳科学(ニューロサイエンス)でもたくさん論文がでています。

またビジネススクール側も変化があり、分析型の戦略つくりから、プロダクトデザインなど想像力を重視する「デザインスクール」の講座も増えてきました。

どちらかというと「アート」の要素が強い思考とはなると思いますが、様々な例に触れたりしながらパターン認識によりある程度感覚はつかめるのではないかと最近は考えています。

このあたりはまた機会があったら、お話しようと思います。

 

24卒の学生には、8/27(土)の1Dayインターンでも少し触れようと思います。

選考なしだけど本番以上!
【一日限り】連続起業家・織田と学ぶ、新規事業創造1Dayインターン
https://goodfind.jp/2024/seminar/7886
8/27(土)1300-1700(Zoom)*先着締切

「優秀さ」とは何か?

**さんは優秀だ!

ぜひ周囲からそのような評価をいただきたいものですが、そもそも「優秀さ」とは何でしょうか?

私はこの「優秀さ」というものがはっきりしないと、決して優秀にはなれないと考えています。目標がわからないところには、行きつくことが難しいのは原理的に明らかです。

このテーマを無視して、勝手におのおのが自分の思う「優秀さ」を解釈して、違う方向に進んでいき思ってる結果にいたらないというのは、傍目で見ていてよくわかることがあります。

例えば、現在この文章を読んでいる立場の一つとして就活生にとっての「優秀な人」とは、率直に言って自分が行きたいと思っている会社の内定を持っている先輩でしょう。

 

ところが、その人が世の中全般で優秀かというと必ずしもそうでなく、あくまで学生同士の評価による、しかもかなり偏った判断であることも多々あります。しかもこの傾向は偏差値の高いといわれる高校出身の、さらに偏差値の高い大学生ほど顕著で、だいたい多くの方々の志望先は「外コン、外銀、商社」の3つに集約されるようです。

例えばコンサル会社の内定者は優秀でしょうか?またはコンサル会社に勤めている人は優秀でしょうか?
これは「コンサル会社に通ることが優秀である」という物差しでは優秀ですが、これは物差しの一つであって、それ以上でも以下でもありません。

たとえばコンサル会社の選考で落ちても、事業家として優秀な人はたくさんいます。彼らは自ら商品を開発し売っています。コンサル会社の人にはないスキルがあり、事業家としては彼らのほうが優秀です。

 

または就活なんか全くしないで、学生時代から起業して卒業前にしっかりとした会社の経営者になっている人も優秀ですし、NPOなどの課外活動で活躍し多くの人に慕われている人も優秀です。

 

実は「優秀さ」には様々な物差しがあり、自分にあっている物差しを見つけてその分野で「優秀さ」を目指すことが成功のための秘訣です。

しかしながら、織田の周りの人は学生も社会人も良くも悪しくも似たような物差しを持っている人が集まる傾向があり(苦笑)、限定的な物差しでは上述のような特定の業界なり会社にいることを優秀と判断することが多いと思います。

 

そもそもその動機はどこから来るのか?これはフランクに話すなら、多くの人は「あの人は優秀だ!」と思われたいような会社や組織に所属したいのです。それにより自分の努力なり地位なりを認めてもらい、将来もそれで保証されたいという本能が働いています。
この”認めてもらいたい本能”が、周囲の現在の物差しに適合するように判断しているだけです。

それ自体は生物として自然なことで全部を否定する気はありませんが、本当の問題は仮にそれを実現できたとして本当に優秀で今後も求めるキャリアなり人生が待っていますか?ということです。

例えば20-30年前なら銀行に入って真面目に働いていれば、多少残業は多いにしても世の中から立派な仕事と思われ、安定した高収入が保証されました。

その後銀行は1990年代より大手までも大統合と大合併が起こり、多くの店舗や銀行名も消滅しリストラもたくさんありました。さらにこれからはフィンテックやデジタル通貨などの挑戦を受けます。

昔であれば1円の違いも許されない銀行の支店で、マニュアル通り真面目にしっかり遂行することが「優秀さ」でしたが、これからは新しい時代に対応して、新規のサービスを作ってくことが「優秀さ」となります。

 

現在は大手もベンチャーも新規事業を作ることの大切さを説いており、それが求められる新しい「優秀さ」となっていますが、これは以前の「優秀さ」とはかなり異なったものとなっています。

それに適応できない大型で硬直的な組織はプライドは高いですが、どんどんダメになり、末路はかなり悲惨な状況になることは想像に難しくありません。

現在のコンサル会社の優秀さは、アウトソーシングされた仕事をしっかりドキュメントに落とすことで、事業を作ることではありません。
これは自分がコンサルタントであり事業家なので自身の経験上の話でもありますが、一般市場で商品を作り、自分の責任で売ったことのない人が実業家になることは難しいです。
ある程度決められたテーマについてヒアリングして、資料に作ることがコンサルタントの優秀さですが、このスキルでは例えば営業やアイディアを商品化するという点では全くの素人です。
なので例えば起業したり新規事業を始めても、まったく売り上げが立たないという痛い経験をして自らの限界を知るという結果になることが多いと思います。

 


このようにいくつかの例でお話ししましたが、結論は「優秀さ」には様々な種類があるので、これを世の中に一つだけある絶対的なものと考えないことが重要です。

Goodfindでは、様々な人の可能性を発見し実現する場所になりたいと考えています。
それぞれの人の持つ「優秀さ」を見つけるためには、多くの人や会社に出会ってそのなかでいろいろやってみることが一つの手がかりになると思いますので、ぜひイベントなどで様々な人の話を直接聞いたり会ったりして、自分の「優秀さ」を発揮できる場所を探してほしいと思っています。

 

 

世の中について少しでも自分の頭で考えてみたい方は、以下のセミナーでお話ししますので耳だけでよいので聞きに来ていただけると嬉しいです。


◆業界分析のコツを、掴む。「人気の8業界」まとめて分析講座
https://www.goodfind.jp/2024/seminar/5050
8/04(木) 18:30–20:30 *定期的に開催中

◆コンサル&連続起業家&大学教授による2時間で世界を理解する講座
https://www.goodfind.jp/2024/seminar/1531
8/09(火) 18:30–20:30 *定期的に開催中

典型的な論理的推論のバグ集

「A社出身者は起業で成功している。その会社に行けば起業のノウハウが身につく!」

 

これは論理的に正しい推論でしょうか?

我々は日常生活で多くの推論を行っていますが、それらは本当に正しい推論でしょうか?ひょっとすると真面目に考えているつもりでも、誤った結論を導いていませんか?
今回は推論の方法の論理的妥当性NG集をキャリアのシーンを例に説明します。

 


<バグ1ー前提(仮定)の誤り>

「コンサル出身者は起業で成功している。よって起業したいならコンサル会社に行くとよい!」

本当に「コンサル出身者が起業で成功してる」のでしょうか?私はその事実の真偽を知りませんが、仮にこの前提が成り立たない場合は、この会社に行っても起業にはプラスになりません。

もしこれを検証するなら「コンサル出身者」と「それ以外の人」で成功確率を比べる必要があります。
昔からコンサル退職者が毎年大量に出ることを考慮すると、成功確率が低くとも一定数の成功者がいるのは確率的にあたりまえのことです。

 

<バグ2ー不適切な帰納法合成の誤謬)>

「最近はスマホなど国産メーカーが弱いから、日本のメーカー(製造業)はダメだ!」

国産のスマホメーカーは確かにアップルなど海外の会社にシェアで押されているのは事実ですね。
しかしその事実から、それを日本の他のメーカーも弱いと一般化しても良いのでしょうか?
そもそもスマホメーカーは全メーカーのほんの一部で、それ以外にも食品メーカーとか医療機器メーカーやロボットなどのメーカーも含まれます。

いくつかの事例から一般法則を導くことを「帰納法」とよびます。実験やデータから一般的に成り立つ結論を導く方法として文系理系問わず様々な場面で使われています。

しかし実験データやサンプルが不足している場合は、その少ない情報から一般化することで成り立たない結論を出す可能性が高まります。これを経済学では「合成の誤謬(ごびゅう)」と呼ばれ、また理学系では「過度の一般化」などとも言われます。


<バグ3ー相関関係と因果関係の混同>

「コンサルの人はロジカルである。よってコンサル会社に行くとロジカルになる!」

前半の「コンサルの人はロジカルである」という事実があったとします。この時に「コンサルの人」と「ロジカルであること」には統計的に”相関関係がある”という言い方をします。

その場合でも「コンサルではロジカルになれる」という事実は一般には導き出せません。
反例は「コンサルに入る前からロジカルだった」ということが考えられるからです。

一般には「相関関係」がある時に「因果関係」は必ずしも成り立たないので注意が必要です。
(逆は成り立ちます!)

同様の例としては以下のようなものがあり、両方とも推論としては誤りです。

「バスケット選手は背が高い。よってバスケットをすると背が伸びる」
「ピアノを習う子は成績が良い。よってピアノを習うと成績が良くなる」

因果関係の推論を誤ると、期待した結果が出なくなるのでご注意ください。(!!超重要!!)

 

<バグ4ー誤った理由づけ>

「某社の内定を取った先輩は**を言ったから選考に通った!」

事実として2つの事象が成り立つ時に、無条件に関係があるとは限りません。この先輩が**を言って通ったことを証明するには、**を言わなかったときに通らなかったという例がないと検証はできません。
もしかしたらこの先輩は、その他の要因ですでに通ることが確定しているなら、多少何を言っても結果は同じになるはずで、その場合発言内容と通過したという事実は関係がなくなります。


<バグ5ー隠れた前提の見逃し>

「大きな会社は安定していてつぶれない。だから大きな会社に行くことが安定である」

大きな会社は統計的に小さな会社よりもつぶれる確率は低いと言えるでしょう。
しかし会社がつぶれないことと、自分の雇用が安定するということは「つぶれない間はずっと雇用が継続する(終身雇用)」という隠れた前提があってはじめて結びつきます。

実際に現在残っている大きな会社も過去20年くらいだいたいリストラしているところが多いです。
*調べてみたくなったら「(会社名)+希望退職/早期退職」でググってみてください。


いかがでしたか?
こんな感じで、我々は日常何気なく推論を行っていますが、そもそもその過程でバグがある場合に出した結論の正しさが保証されません。
少しでも論理的に強くなるということが、思っている未来に行くためには、この分野の勉強は実務的にも必要かと思います。


ロジカルシンキングに関するセミナーはこちらでどうぞ!(定期開催)

ロジカルシンキング講座-コンサル・金融・商社等の難関企業レベルへ-
https://www.goodfind.jp/2024/seminar/7003

◆ケース面接対策~McK、BCG等の外資系戦略コンサル志望者向け
https://www.goodfind.jp/2024/seminar/7002

 

 

 

将来有望な分野や業界は?ー「食」に関する産業ー

個人のキャリアを考える人から「将来はどこの業界が良いですか?」という質問をよく受けるのですが、その回答の一つである『「食」に関する産業』について今回はお話しします。

<Index>
◆人口動態から見た市場
◆日本の食産業は競争力がある
◆「垂直農場」という考え方
イノベーションとは?


◆人口動態から見た市場

将来の業界や産業については私自身、未来が見えるわけではありませんが、日常生活を普通に観察してみてわかることもあります。
例えば2022年現在、世界には約80億人が地球上に存在しますが、いろいろな国際機関の試算によると2050年には90億から100億人とかになると予測されています。

国際連合報告センターより)
「世界人口の増大が鈍化、2050年に97億人に達した後、 2100年頃に110億人で頭打ちか」
https://www.unic.or.jp/news_press/info/33789/ 


そうなると当然のことながら、人間が増えるわけですから原始時代の生活に戻らない限り、それ相応の「衣・食・住」が必要になります。このうち特に「食」については人間の生存にとって必要なものであるので、これから増えていく人口の分を、追加で生産する必要があります。つまりマクロ的な経済的視点では、食料品に関する業界規模は80億から90-100億に増えていくわけです。

 

◆日本の食産業は競争力がある
食料が必要になるので、食料品メーカーは全体として当然多くの売り上げを計上することになります。その中ので勝つ会社が日清食品であるか味の素であるかは中長期では予測できませんが、少なくともどこかの企業は(海外かもしれない)、大きく伸びることが予想されます。
日本の食については一般的に世界的にも味や品質という点で高評価を受けています。

例えばJETROの調査による以下のレポートがあります。
日本食品に対する海外消費者アンケート調査-6都市比較編-モスクワ・ホーチミンジャカルタバンコクサンパウロ・ドバイ」
https://www.jetro.go.jp/ext_images/jfile/report/07001590/compare_6cities_rev.pdf

(本文より抜粋)
・好きな外国料理
日本料理が1位で突出。2位にイタリア料理、3位に中国料理と続く。日本料理は特にバンコクジャカルタで人気。
・日本料理が好きな理由
 主な理由は「味の良さ」「健康に配慮」「洗練されている・高級感」。
・日本料理のイメージ
 「美味しい」「健康に良い」「おしゃれ」「安全」など総じてポジティブなイメージが強い一方、4割程度の回答者が「価格が高い」と回答。


日本の食品メーカーである、明治、味の素、日清食品キッコーマン、ヤクルトなどは世界でシェアもブランドも確立しており、今後も様々な新製品を開発していくことが望まれています。
メーカー以外でも吉野家松屋すき屋などの牛丼チェーン店も東南アジアを中心に店舗を増やしていますし、日系のコンビニが増えていくと、そこで日本のお菓子や飲料なども当然売り上げが増えるので市場の拡大が現実的に見えてきます。

日本企業にとって有利な点は、東南アジアに位置する日本食はいわゆる華僑がいて中華料理が普及しているエリアでは競争優位性があります。そして東南アジアには人口が集中しており、14億の中国はもちろんのこと、人口4位のインドネシアが2.7億、ベトナムやフィリピンが約1億、さらに南アジアまで足を延ばせばインドがあり、ここは若干味のベースが異なるものの13億の人口がいます。

アジア地域には世界の人口の約6割がいて、その食の嗜好性が日本と近いのであれば、それは大変有利な条件となりますので、欧米のシェアを仮に取れなかったとしても十分なマーケットのサイズは確保できます。

 

◆「垂直農場」という考え方

一方食料品が現在の方法や技術だけで90億分作られるためには、現在の農業のやり方では農地も足りなくなったり、また生産も追いつかない可能性があり、新しい農地開発や農業の方法が必要になります。つまり何らかのイノベーションを起こさないといけません。
イノベーションは何も科学的な品種改良や遺伝子組み換えなどばかりではなく、農業のやり方を変える、流通経路で効率化する、もしくは調理法で長期保存の方法を作るなどいろいろなやり方があり、必ずしも理系の技術者によるものはありません。
例えば現時点でも「垂直農場」というものがあり、都市のど真ん中で野菜や果物を吊り下げる形で栽培する方法では、面積当たりの収穫量も多く、また水を流したり浸したりするのではなく、シャワーのように噴射することで少量の水分で効率的に栽培することが実現します。

シンガポールの空中農園(国連大学ウェブマガジンより)
https://ourworld.unu.edu/jp/farming-in-the-sky-in-singapore


イノベーションとは?

このように新しいニーズがあるところには、イノベーションが生まれる機会がり、それは何も技術だけで解決するわけでもありません。
「本当に食料が足りなくなると困る!」という状況下で誰かが何か新しいことを発明しないといけない時に新しい知恵がうまれ実現する余地がたくさんあります。

そのように考えれば、将来不安だからそれを避けて生きるのではなく、それを積極的に解決しようと心がけるところに新しい挑戦とイノベーションが生まれ、それで人類は進歩していくのだと思います。

この垂直農場という考え方には、何も植物学や生物学の学位がなくてもできる発想です。イノベーションというと難しいと思いがちですが、身の回りにもたくさん”普通の人の知恵”があります。
例えば身近で使っている洗濯機の中にある「糸くず取りネット」は主婦の方の発明で、彼女はそれにより特許を取っています。

別の例では水道の排水管で使う「S字トラップ」は、洗面台の下の配管がS字になったものですが、これは排水をS字のところで少量ためて排水管からの物の侵入や臭いを防ぐ効果があります。

このような例を見れば、普段からちょっとしたニーズを見つけ解決しようと思うだけで、いろいろな可能性があることが分かると思います。




今回は「食」というテーマで業界を見てきましたが、様々な未来の可能性を見つけることであまり動いていない業界も突然違った世界に代わる可能性があるので、自由に想像してみることも大切かなと思います。

 

起業家の価値が一番となる!?

起業家の価値が高まる理由
 
日本には起業家が少ない。なぜか?起業しなくとも仕事があるから。特に若い人は仕事の種類や内容はともかく、全体として需要(求人)に対して供給(働き手)は圧倒的に足りない。何も面倒な起業などしなくても毎日の生活はアルバイトでも、都会でそれなりの生活は過ごすことができる。
これが他の国に行くとまったく事情は異なる。例えば中国やインドは人口が多い割には、雇用枠が少なく、またよいポジションには人気が集中するためすごい倍率を潜り抜けないと入られない。そうなると必然的によいポジションにつけない人は他の国に行くか、自分で起業するしかない。そういう人たちがたくさん出てくれば、そこでの競争は激しくなり良いサービスやプロダクトを提供できるところだけが残り、イノベーションも進み社会は進展する。
 
ユニコーン企業の数を世界比較してみると現在以下のようになっている。
 
(CB Insight, As of July 2021)
 
(1)USA 378社(50.4%)
(2)China 155社(20.6%)
(3)India 34社(4.5%)
(4)UK 31社(4.1%)
(5)イスラエル 17社(2.3%)
 
(11)日本 6社(0.8%)
 
またユニコーン企業を個別に見ると以下のようになっている。
 
(CB Insight, As of June 2022)
 
(1)Bytedance(China)Entertainment 140B
(2)SpaceX(US)Space 125B
(3)SHEIN(China) EC 100B
(4)Stripe(US)FinTech 95B
(5)Klarna(SWE)FinTech 45B
(6)Canva(AUS) Software 40B
(7)Checkout.com(UK) FinTech 40B
 
<(参)日本のユニコーン企業>
Preferred Networks(JPN) AI 2B(2018/5)
SmartNews(JPN) News 1.6B(2021/6)
Opn(JPN) FinTech 1B(2022/5)
Spiber(JPN) Material 1.22B(2021/9)
Playco(JPN) Other 1B(2020/9)
 
CB Insightsより
 
 
この現状を見て「だから日本はダメなんだ」といか言いたいわけではなく、「だから俺達にはチャンスがある!」が私の主張である。
 
まず日本の事情についていえば、上記の通り起業するインセンティブは安定した社会ではあまり多くない。ということは起業家が少ないので競争が厳しくないということでもある。
 
次に日本はお金がたくさんある。国の借金自体は対GDP比でいうと世界最高であるが、実は日本の国としてのBS(バランスシート)を見た場合は債権も多く、それを無視した論調が多い(本当に困る。。)。
加えて日本の会社も銀行もVCもたくさんお金があり、むしろ投資先が絶対的に少ない。ここには大きなミスマッチがあって無理にでも起業してもらい投資しないと困っているところもある。
これはインドなど途上国ではなかなか見られない傾向である。(ちなみに先進国には日本と同じパターンは多い)
 
更に加えて人口減少だの市場の縮小などと言われているが、日本の市場規模は現在名目GDPでは世界第3位である。1.2億の比較的裕福で中間層の購買力が分厚い堅調な需要も存在する。中長期で見れば大きくならないため、外国人投資家はあまり積極的に投資はしないかもしれないが、それは無視できるほど国内の投資家もたくさん存在する。
 
あともう一つ日本は地理的に孤立しており、そのせいで言語も文化も独自のものを保っており、それが海外からの競合の進出の障壁になっている。特に日本語は漢字という非常に難しい形をして読み方も複雑な文字を持っているため習得に非常に時間がかかる。
 
私はよく日本を簡単に説明するときに、
 
「日本は非常に豊かなガラパゴス島のような国で、日本語という難しい言葉を話しサービスの品質に非常に厳しい勤勉な恐竜のような特殊な生物がすんでいる国です(笑)。」
 
と言っています。
 
 
上記を総合すると起業するということはもっとフォーカスされてもいいのではないか?
実際に今年の東大の総長の挨拶でも起業ということが強調された。中央官庁もいろいろな制度も予算も用意して起業を支援している。
例えば創業した時に取らなければならないリスクとして銀行などから借り入れをしたときの「個人保証」という制度があり、事業が失敗した時には個人で負債を弁済しなければならないというものがあるがこれをなくそうだとか、そもそも銀行借り入れをしなくともVCから直接投資を受ければ借金をする必要もなくなるため、ほぼリスクフリーで会社を運営出来て、もしもうまくいったときには社会貢献と富や名声がえられるのであれば、どうして挑戦しないの?と思ってしまう。
 
おそらくは「起業」という中身があまり見えていないので、知らないことも怖さがあるかと思うので、これからこういう話題には折を見て触れていきたいと思います。
 
まずは日本では起業は全然怖くないよ!というお話でした。
 
 
 
 
 
 

将来有望な分野はどこですか?ー科学やテクノロジーの未来ー

多くの学生や社会人からよく聞かれる質問ですので、今回はこのお話をしようと思います。
いつものように結論から言うと

 

インフラ、生活用品、食料品、医療、介護、教育、、、実は多くの分野!

 

 

世界という規模で見れば、実に多くの分野が将来も有望と考えられます。ほとんど全部と言っても言い過ぎではないと思います。というのも現在はグローバリゼーションのおかげで、先進国のお金や技術がどんどん途上国に流れ地上全体の生活水準を底上げしています。
これは先進国の善意から来るものではなく(残念ながら)、経済合理的な目的で先進国の余ったお金を上昇余地のある途上国に使って無理やり成長させ、それで先進国側が儲けたいという理由によります。
もちろん純粋に善意から途上国を支援するNGONPOも一定の存在価値を出していますが、経済全体から見ればまだまだ割合は小さく、多くは純粋に「投資目的」でお金が流れています。

そのような状況下で、毎年全世界の経済成長は戦争やパンデミック等がなかった場合、コンスタントにGDPが3%程度伸びることが経験的にわかります。世界経済の3%というとイメージが付きにくいかもしれませんが、この規模は毎年イギリスという国が一つ誕生するのと同じというと、かなり大きなものであると想像できるでしょう。

この3%も分解すると大きくアメリカ、日本、ドイツのような先進国と、インド、ナイジェリアのような発展途上国に分かれ、日本などの先進国はだいたい良くても2-3%のGDP成長で、インドなどは8-10%成長をしています。

日本を含む先進国は経済がある程度成長しきっていて、物質的には新しいニーズが少ないのでサービス業を中心に成長し、インドなどのまだ社会基盤を整え街を作るような国はインフラとなる鉄道、空港、工場など物理的な製造業の伸びが見込めます。

世界的には途上国の生活向上によりほぼすべての産業が伸びますが、その中で日本が存在を示せる分野はどこでしょうか?たぶんこの答えが、求められている情報で、それは以下の分野になります。

 

 

まず経済産業省が力を入れている分野を挙げておきます。
経済産業省なので、正確には「伸びる業界」ではなく「伸ばしたい業界」

(1)  水(淡水化、上下水道
(2)  石炭火力発電・石炭ガス化プラント
(3)  送配電
(4)  原子力発電
(5)  鉄道
(6)  リサイクル
(7)  宇宙産業
(8)  スマートグリッド・スマートコミュニティ
(9)  再生可能エネ ルギー
(10) 情報通信
(11) 都市開発・工業団地

 

 

こちらは少し古い目標でしたが、最近はこのように主張しています。

「産業技術ビジョン 2020」 (経済産業省)より

https://www.meti.go.jp/press/2020/05/20200529010/20200529010-2.pdf

 

A) Society5.0 を実現する Intelligence of Things とそれらを支えるデジタル

テクノロジー

B) バイオテクノロジー [参考:バイオ戦略 2019]

C) マテリアルテクノロジー

D) エネルギー・環境 [参考:革新的環境イノベーション戦略]




一方で織田が個人的に日本が有望と考える業界は以下になります。

◆  素材(炭素繊維、電子部品用など)
◆  生活インフラ施設(上下水道、鉄道、道路)
◆  精密機械
◆  自動車、およびその部品 *電気自動車やバイクを含む
◆  産業用ロボット、工作機械
◆  発電、蓄電/送電システム(スマートシティ)
◆  飲料、食料品
◆  航空機、宇宙産業
◆  バイオ、医療(再生医療、医薬品、医療システム、介護)
◆  ゲーム、エンタメ(アニメなど)
◆  技術や海外への投資(M&Aを含む)


もちろん無条件で有望というわけではなく、現在の強いポジションを必死で守る素材とか自動車みたいな業界も含まれます。それに勝てたとしても未来永劫そのままでいるわけでもありません。世界はどんどん狭くなり情報もネットを通し一瞬でシェアされる世界では、イノベーションはどんどん加速され、もしかすると人類はそれに疲れてしまう可能性もあります。

 

30年先にはもしかすると人間は働かなくても生きていける世界が来るかもしれません。そうなるとかつて栄華を誇ったローマ帝国の国内のように人は「パンとサーカス(*)」の生活になるかもしれません。
その時に人類は何を目的に生きているか?それはこれから解決しなければならない問題かもしれません。

 

(*)
パンとサーカス」は、詩人ユウェナリス古代ローマ社会の世相を批判して詩篇中で使用した表現。権力者から無償で与えられる「パン」と「サーカス」によって、ローマ市民が政治的盲目に置かれていることを指摘した。パンと見世物ともいう。 物質主義の例えとしてしばしば用いられる名言であり警句である。
wikipediaより)

 

いずれにせよ未来はどんどん変わっていきます。少し先を見据えつつも全部を見通すことは不可能なので、広い視点を持ちつつ、明日の目標をしっかりみつめて生きていくことが大切かと思います。

 

業界分析や世界動向については以下のセミナーでもお話ししますので、よかったら聞きにいらしてください。

 

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https://www.goodfind.jp/2024/seminar/1531
6/09(木) 18:30–20:30 オンライン(Zoom)

 

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https://www.goodfind.jp/2024/seminar/5050
6/14(火) 18:30–20:30 オンライン(Zoom)