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「論理(ロジック)」について学びなおす~その1「命題」について~

論理的、ロジカルとは?について外資コンサル時代から長年講義をしていますが、改めて基礎から学びたいという方も周囲にいらっしゃるので、少しシリーズでお話したいと思います。(続くかは???)
範囲は高校数学で習う部分が中心で、時々大学の教養程度の数理論理が入ってくるかもしれません。(今回は入りません)
 
今回は「命題」についての基礎編です。
 
最初にちょっと例をやってみましょう。
 
◆命題として考えた場合、以下の記述の(真)と(偽)を判定せよ。
 
(1)彼は右利きではないから左利きだ 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
命題としては正しくない。(=偽)
 
前提が何であるかを明確にしていないので一概には言えませんが、「両利きの人」や「両方利き腕でない人」がいるという反例(*)があるため偽となる。
 
*「反例」=その事実に反する例。論理的には反例一つで命題を否定できる。
 
論理的にこれが真であるためには「人間は右利きか左利きのいずれかである」という仮定が必要。
この性質を「排中律」と言います。実はこれが成り立たない論理体系の「直観論理」というものも存在します。(<=この文は無視してもらって問題ないです)
 
 
 
もうひとつやりましょう。
 
◆命題として考えた場合、以下の記述の(真)と(偽)を判定せよ。
 
(2)大人ならばこれは分かる。しかし彼は子供だから分からない。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
命題としては正しくない。(=偽)
 
なぜならば子供である場合について、ここでは述べられていないから。
 
元の真である命題から何が導けるかを考えることは重要です。この基礎のところで間違えると推論で多くの間違った結論を導き出すからです。
 
 
ここから「命題」についての簡単な解説をします。今回の内容は高校数学の教科書にのっています。
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(命題の裏、逆、対偶についての説明)*知っている人は読み飛ばして問題ないです。
 
命題の定義は「真偽を決められる文」。より正確には”真”か”偽”のどちらか片方だけが
客観的に決まる文。
命題は「かつ」、「または」、「ならば」を使って組み合わせて使うこともできます。
 
*「ならば」は「かつ」と「または」で表現されるため最初に定義しなくともよいが、それは細かなことなのでここでは無視してよい。(<=この文章は無視してもらって問題ないです)
 
今回は命題のひとつの形である「ならば」についてここで解説します。「ならば」は推論でよく使うのでそれについて理解することは推論の誤りを防ぎます。
 
 
「pならばqである」(p->qと書く)
 
という命題があったとします。(pを「仮定」、qを「結論」と呼びます)
 
命題には「裏」、「逆」、「対偶」というものがあります。
 
裏:「pでないならばqでない」(¬p->¬qと書く)
逆:「qならばpである」(q->pと書く)
対偶:「qでないならばpでない」(¬q->¬pと書く)
 
*「pでない」は”¬p”と書く
 
例で解説しましょう。
 
青森県は東北地方である」は真の命題です。
 
裏:「青森県でないならば東北地方でない」×(反例)(青森県ではない)岩手県は東北地方である
逆:「東北地方なら青森県である」×(反例)宮城県も東北地方
対偶:「東北地方でないなら青森県でない」〇
 
元の命題が真(つまり正しい)の場合、その命題の「裏」と「逆」はいつも真にはなりません。しかし「対偶」は常に真になります。
 
 
 
(命題の裏、逆、対偶についての説明 終わり)
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例文の2番目を上記の言葉を使って解説します。
 
「大人ならばこれは分かる。しかし彼は子供だから分からない。」
 
最初の文章を丁寧に書くと
 
「(誰かが)大人であれば、(その人は)これは分かる。」
 
p=大人である
q=これは分かる
 
「彼は子供であるならば、分からない」
 
元の命題で置き換えると
 
pでないならば(¬pと書く)「大人でないならば」=「子供ならば」
qでない(¬qと書く)=「これは分からない」
 
¬p->¬q(命題の裏)
 
命題の裏は一般に真ではないことの例となっている。
 
命題の裏が常に真でないことは日常生活では違和感があることもある。
 
「20歳以上が入れます」
「20歳未満は入れません」
 
上記二つは互いに命題の裏となっているが同じ意味ではない。上の文章では20歳未満については述べられていないので入ってもよいかもしれない。しかし下の文章では20歳未満はNGである。
実生活では意味を人間が勝手に解釈することもあるため、事実上命題の裏を正しいと考える習慣は存在する。
 
しかし厳密には異なることを示す次の例を挙げる。
 
沈みそうな船に20kgの荷物を載せてみたが沈まなかった。この時言えるのは、
 
「20kg以下は船に載せられる」
 
しかしこの命題の裏を考えてみると
 
「20kgより重いと船に載せられない」
 
かというとそうとは限らない。実はこの船は意外に頑丈で30kgでも載せられる可能性もあり得る。
 
自然科学や自然現象はこの例のように論理に忠実に従うため、言葉の意味や論理を正確に理解し使うことで正しい推論ができるようになると思います。
 
*正確には自然科学は現象の説明を論理的に矛盾がないように作っている。なので論理的に正しく記述する時には自然現象の説明に矛盾が生じない。(実はいろいろ厳密に探すと矛盾はたくさん見つかってきているが、一般には問題ない。)