「バスケットボールの選手は身長が高い。よってバスケットボールをすると背が伸びる」
「ピアノを習う子は勉強ができる。よってピアノを習うと勉強ができるようになる」
よく聞きそうな話である。しかしなんか怪しいくないだろうか?
今回は二つ以上の物事の関係を表す「相関関係」と「因果関係」について解説します。
まず冒頭の
「バスケットボールの選手は身長が高い。よってバスケットボールをすると背が伸びる」
は正しい推論だろうか?
まず推論の検証の前に現在分かっていることを確認すると、遺伝子に関する統計的な調査で身長には遺伝子が大きく関係する。だからと言って科学的な結論は「遺伝子が全てだ!」とまでは言っておらず、「遺伝子の影響が大きい」と言っているに過ぎない。
では身長を決める要因として「遺伝子」以外に「バスケットボール」は関係あるのであろうか?
結論から述べると、これだけでの情報では分からない。
少なくとも論理的に言えることは、
「バスケットボール選手の身長が高い」ということから「バスケットボールをすると身長が伸びる」ということは導けない。
おそらくは、ゴールが高いところにあるバスケットボールでは身長が高いとゴールに近いため有利である。その特徴のため身長の高い人が選手として残っていく。というのが正しい推論だろう。
ここで「相関関係」という言葉について説明すると、「バスケットボールの選手である」ということと「身長が高い」という事実が同時に起こりやすいときに「相関がある」という用語で表す。より一般的な言い方をすると「一つの事象の性質が強くなればなるほど、もう一つの事象の性質も強く(または弱く)なる時”相関(関係)がある”」という。
簡単な例では身長と体重は相関関係がある。一般には「身長」が高くなればなるほど「体重」は大きくなる傾向がある。これは統計的に正しい事実で、我々も経験上よくわかっている。
「身長」と「体重」の例は初歩の統計学で相関関係の典型例として教えられ、だいたいクラスなどの中でサンプルを30名くらいとれば、グラフに示すと身長と体重の関係は右肩上がりに散らばっているのを見たことがある人は多いはずだ。数学の用語ではこれに度合いを付けて「相関係数」という数字でその強さを表現したり、近似する一次直線を求めたりする。
ちなみに相関は2つの変数(対象」だけを扱うわけではなく3つ以上でも問題ない。例えば「身長」、「体重」、「体積」の3つを取ったとすると、これもそれぞれ相関関係がある。
このように「相関」というのは2つの対象がそれぞれ他方と連携しているか、というのがこの用語を使う気持ちである。
ここで注意したいことは相関する2つを考える場合、それらの間には時間の前後(Aが起こったからBがおこる)や因果関係(AはBの原因である)は必ずしもないということである。(つまり関係ない)
ここでさりげなく述べたが
(1)時間の前後がない
(2)因果関係がない
に注意してほしい。
(1)「バスケットボールをする」=>「身長が伸びる」には時間の前後がある
(2)「バスケットボールをする」=>「身長が伸びる」と考えるときには因果関係を想定している
この例で言えることは
「バスケットボールの選手」<=>「背が高い」 *相関関係がある
だけであり、上記の時間の前後や因果関係は一切ない。
(★ここ大事)
今回の話の結論をここでまとめると、以下のようになる。
「相関関係」がある時に時間的な順序や因果関係を勝手に想定しない!
ちなみに、しかしなぜ我々はそのような誤解をしがちなのであろうか?それには理由があり、そこを理解するとこのバグに引っかかることが少なくなりますので、「疑似相関」について解説しようと思います。
「バスケットボールの選手であること」と「背が高いこと」は相関関係はありるが因果関係はありません。この2つを結び付けているのは「(ゴールの位置が高い)バスケットボールは背が高いことは有利」という事象です。
「バスケットボールの選手である」<=>「(ゴールの位置が高い)バスケットボールは背が高いことが有利」
「背が高い」<=>「(ゴールの位置が高い)バスケットボールは背が高いことが有利」
このように2つの事象を関係づける”第三の”事象があって初めて関係が説明されます。
このような時に元の2つの関係を「疑似相関」とよびます。
「擬似相関」とは、2つの事象に因果関係がないのに、第三の要因により因果関係があるかのように推論されること。(少し厳密ではない言い方ですが、ここではこの言い方をします)
他の例で説明すると
「ピアノを習っている子供の学校の成績は良い。ピアノを習うことで学校の成績が良くなる」
ここでの2つの事象を結び付けているのは、「良い家庭環境」でしょう。これがある家はピアノを習わせているし、たぶん勉強もしっかししているので学校の成績が良くなります。
最後になりますがこれを読んでいる就職活動をしている人には、この疑似相関があるか考えてみてください。
「コンサル会社に入ると成長できる!」
バスケットボールの例とどこか似てないでしょうか?(だいぶ前提も曖昧ですが。。)