Goodfind講師ブログ

次代を創るビジネスリーダーのためのキャリアサイトGoodfind

コロナで身近に迫る危機(その2)

前回の記事の続きです。


<その2(もくじ)>
(4)国際化の中での孤立
(5)企業の合併、買収など再編
(6)国家または企業による個人情報の独占
(7)企業や国家によるメディア私物化



(4)国際化の中での孤立
 
人々の日常生活における移動が減っています。在宅勤務が増え一部は以前のように会社や学校に行く生活に戻っていますが、他の国では第3次の感染者の増加により再度外出禁止などの措置が取られています。日本においても10月にいったん経済を活性化するために「go toキャンペーン」が行われました。これは外国人の来日がなく地方の観光地などは打撃を受けている中、外出したい日本人による国内からの内需の活性化と地方への還元という文脈では論理的です。
 
そのような中で国々をまたぐ移動がほぼなくなった現在でもオンラインの世界での活動は活発です。4月にはあまりなかったオンラインでのイベントやセミナー(ウェビナー=webinarといいます)は現在乱立状態になり、またyoutuberも増えました。現役も引退された方もスポーツ選手の多くがyoutubeチャンネルを開設しており、視聴者の限られた時間を奪い合っています。
 
オンラインで生活または仕事する人が増えて活動的になる一方で、そこに対して適応に時間がかかる人がいるのも事実です。もちろん困るのは適応できない側で、それは全体としてみた日本という国がこれに該当します。物理的に島国で海に囲まれて守らている国は、「ガラパゴス」にはなりがちです。これまでも政府等が主体になり国際化のための教育や制度を整えてきましたが、物理的な移動が制限されることで留学などを含めやりにくくなっています。

一方でオンラインでの生活が普及してくると島国とかアジアにあるとか、そういう地理的な事情はもはや関係がなくなってきます。実際、問題意識がある場合はインターネットにつながっている相手や国であれば、国内の人にコンタクトするのと全く同様にアクセスすることが可能です。
それを阻んでいるのが語学の壁と、内向きの態度です。現在ネットでつながったことによって海に囲まれたこととか関係ないはずなのに、なんか理由もなく外に出ていかないということになっていませんか?飼いならされた動物が首輪がなくても外に出なくなっているのと同じ現象が今まさに起こっていると思います。
 
 
(5)企業の合併、買収など再編
 
景気はしばらく悪い状態が続きます。株価だけが堅調ですがあれは”官製”のバブルです。もはや株式市場は実体経済と乖離しすぎており、「株式市場」というルーレットが政府よって運営されています。
実経済はもう少し心配でIMFの今年のGDPの予想値は-4.4%となっています(7月)。今後の改善のスピードは、コロナによる移動制限が今後もどれくらい続くか、またはワクチンがいつくらいに量産できるかによって決まります。
業界内での倒産、買収、再編などは景気の悪い所から起こります。まず起こっているのは航空産業で、ヴァージンエアやタイエアが4月くらいに倒産しました。そして韓国第二位のアシアナ航空もつぶれ業界第一位の大韓航空に吸収されるようです。
 
全般的には旅行、飲食、小売りなどのコンシューマー向け業種がコロナの影響が大きいため最初に再編が来ますが、それがだんだん他のサービス業、そして購買力低下がやがて製造業に波及していくことが予想されます。
自動車の販売台数も今年は激減しそうで、トヨタ自動車はまだ利益を確保しそうですが、その他の会社は不振によりリストラ、合併や提携を視野に入れた動きが加速すると予想されます。
 
 
(6)国家または企業による個人情報の独占
 
コロナのクラスター早期発見や拡散防止のために、スマホを使ったトラッキングシステムは有効です。その最たる例は中国で、元々国家による一元管理があったため拡散防止の時には徹底して非常に役に立ちました。例えば自分が検査で陽性になった場合、3日以内に出会った同じ列車の同じ車両に乗った人全員に濃厚接触者であることを知らせ、すぐに隔離して検査させるなど中国でしかできない芸当もありました。
先進国では個人情報保護や個人の権利主張などがあるため、このような一元管理は表立ってはすることができませんが、危機管理の点からはある程度集権的にデータを扱うことはパンデミックの対応としては適切です。
 
問題は本来は国が主体となりこのことをすすめることは良いのですが、データを持っているのがGAFAなどの企業群になると国家は彼らの力を借りなければ何もできなくなります。さらに企業には株主がいたり、グローバルに展開するため特定の国単位での利害の調整が難しかったりします。GAFAのデータの独占状況は本当に「独占」状態で極端なため、定期的に競合から独占禁止法違反の訴訟を受けていて、解体を要求されています。
企業が独禁法違反の勧告を受けて解体されたときにはデータも分散します。そうなるとデータ間の突合などがやりにくくなるので、中国のような一元管理するシステムよりも効率がわるくなることなり、中国のGAFAである「BAT(Baidu、Alibaba、Tenscent)」または「BATH(Baidu、Alibaba、Tenscent、Huawei)」などと差がつき、彼らのテクノロジーが欧米を上回るという事態が発生するかもしれません。
 
このあたりのいろいろな事情が絡まっているところが難しい所で、今後はビジネスのみならず防衛や軍事、ヘルスケア全般でデータの独占とその利用、取り扱いの問題はどんどん大きくなっていくことが予想されます。
 
 
(7)企業や国家によるメディア私物化
 
アメリカの大統領選挙やコロナの報道からメディアの情報にかなり偏りがあり、場合によってはそのメディアの事情で情報統制される傾向があることがありました。本来ジャーナリズムは中立の立場で自身の立場と責任をもって意見を発することが存在意義でしたが、最近の資本主義においては少し様子が変わってきました。
一般には共産圏では情報統制が大きく、例えば旧ソビエト連邦などは共産党に有利な情報しか流さなかったことは有名な話です。しかし実際は民主化して約30年たった今でももしかするとそれほど状況は変わっていないかもしれません。中国では現在もファイアーウォールがあり、いくつかのブログやメディアを見ることはできませんし、googleのツールやLINE、facebookなどのSNSVPN経由でしか使えません。
 
国家とは別に企業もメディア情報をコントロールしています。企業はメディアのオーナーであり、その企業には株主という資本主義では絶対に逆らえない人たちがいます。現代では政治のプロパガンダにネットの利用が有効であり、そのため支持政党を応援する大株主が自分の会社のメディアに対して支配力を使っています。その影響は全く関係のない視聴者のほうにもおよび、メディアの恣意的な「見えざる力」に引っ張られる機会が多くなっています。
 
我々はそれに対してどう対処することがよいのでしょうか?
 
情報リテラシー」を磨くことが必要になっています。具体的には書いてある情報を正確に読み取る力とメディアのポジションを理解したうえで解釈するという力です。それは例えば小売店のチラシを見るときと同じです。チラシには宣伝が書いてあると思えば、それは想定した消費者に購買意欲をもりあげるために書かれている情報、と解釈すればよいのです。
 
ネットでの情報が氾濫し我々は以前にもまして賢く生きることが求められています。「国営放送や新聞社が言うのだから間違いない!」みたいなことを言っていては生きていくことが厳しくなる時代だと思います。
 
 
以上2回シリーズになりましたが、コロナで身近に迫る危機についてお話しました。