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(新春の雑感)2023年の世界はどうなる?

毎年年初にメモ程度ですが、今後の世界についての雑感をゆるりとまとめて書いています。

***長文注意***(約13,000字)
*今年も長くなってしまった。。。
*本文は信頼できる情報をもとに書いていますが、ほぼ記憶のみから作成しているので正確性や内容の判断はご自身でお願いいたします。
(誤解、誤認、誤植についてのご指摘は大変うれしいです!)


(参考、昨年(2022年)の記事はこちらへ)


=目次=

(1)びっくりの連続だった2022年
(2)NATOは出てこなかったウクライナ紛争
(3)中国ゼロコロナからの大流行
(4)急激な円安と物価高
(5)解消しない国内の人材不足
(6)IT企業は受難の時代か?
(7)日本のスタートアップの将来
(8)コロナ、ウクライナ、円安、、、今後の世界

 

(1)びっくりの連続だった2022年

2022年で世界的に一番大きな事件といえば2月24日に起こったロシアによるウクライナ侵攻でしょう。まるで前世紀のような地獄絵巻が21世紀に起こってしまいました。
それによる世界の混乱は長く続き、2023年年初においても未だ停戦が見えない硬直状態となっています。

一方でコロナに関しては社会での適応した姿が見えるようになってきており、人々は注意しつつも外出したり、対面で会うなどのシーンが戻ってきました。
私も2022年は約2年半ぶりに海外に行き、4-6月の間インドのバンガロールで過ごして、また10月にはシンガポールに滞在し、現地での仕事と日本とのリモートワークを行っていました。
久々の海外生活やインドでの大学での対面授業などは、ほんの数年間とはいえできなかったことができると大変に新鮮で、またその良さも改めて感じることができました。

経済についてはウクライナ紛争の影響で世界中で物価が上がり、為替も大きく円安に振れることで国内の物価が大げさでなく何十年ぶりに値上がりしました。
あまりにも久々すぎて、おそらく30代以下の人にとっては初めてのインフレ経験でないかと思います。


嬉しい出来事も悲しい出来事もありました。
嬉しいほうは北京オリンピックやサッカーW杯での日本の活躍です。特にサッカーは強国であるスペインとドイツを破った快挙に国中が盛り上がりました。
選手たちの多くは欧州でプレーしており彼らを中心に組む日本チームはグローバル化した戦士たちなので決してまぐれなどではありません。この分野でグローバル人材がどのようなプロセスを経て作られ、どのようにチームとして機能させるかという点で、これは企業にとっても参考になる事例かと思います。

悲しい事件としては、安倍元総理の事件がありました。この世界で最も平和と思われている日本であのような悲惨な事件が起こったことは本当に衝撃的でした。
背景にある宗教法人の問題などが明るみに出てきましたが、これまでタブー視されてあまり話題に取り上げなかった一部の問題が、このような犯罪につながることは社会の中で増えているような印象があります。


ざっと見てみた2022年でしたが、これからどのようなことが起こるかテーマ別にみていこうと思います。


(2)NATOは出てこなかったウクライナ紛争

2022年2月24日ロシアが主権国家であるウクライナに軍事侵攻しました。21世紀にこれほど露骨に大国が他国に侵攻する出来事に世界は大混乱しました。
ロシアのプーチン大統領は早期にキエフや東地区を制圧する予定でしたが、ウクライナ国民全体の反撃により短期での制圧は実現せずに、結局一進一退を繰り返し現在も硬直状態です。
戦場は荒廃し、まるで100年前の世界大戦を思い出すかのように野蛮な行動を見ると、人類は過去や歴史から何を学んでいるかと言いたくなります。

2014年にもロシアはウクライナに侵攻して一部を事実上統合していますが、その際にも他の国々はロシアの暴挙ともいえる行動に対して経済制裁のみで有効な手段は打てませんでしたが、今回もそれと同様直接の武力行使はなく、ウクライナの国土は今でも戦場となったままです。

今回のロシアによる軍事侵攻は、東ヨーロッパの国々が次々とEUならびにNATOに加盟し続ける中でロシアが緩衝地帯を失い、その存在自体が脅かされている結果です。元々はEUは東への勢力拡大をしないという約束がありましたが、それを破っていることにプーチンは腹を立てています。

戦争という行為自体を引き起こしたロシアは批判されてしかるべきですが、そこで「欧米は良いほうで、ロシアは悪者だ!」というのは西側の見方であり偏っていると思います。
歴史では勝ったほうを「善」に書き換えますが、「勝てば官軍」の論理では本当の正義がどこにあるかはわからなくなります。
よって、この戦争の解釈もしっかり内容を見るべきで、双方ともに自分の論理があり自らの正義と理解することが前提です。我々は欧米サイドのニュースばかりを目にしますが、中立で考えるためにロシア側のニュースや他の識者の考えを調べたうえで判断すべきだと思います。


(3)中国ゼロコロナからの大流行

中国のゼロコロナ対策は2022年には裏目に出たようです。3月には経済の最大都市のひとつである上海がロックダウンとなり約2か月の間、人々から生活の自由を奪いました。
他国ではすでに国境を開いているところが多く、まだ感染者は一定いますが人々はあまり気にせず元の生活に戻っています。

実は私も4-6月にインド、10月にはシンガポールに行っておりましたが、どちらの場所でも手洗い、うがい、マスクの着用などで気を付けているものの、ほぼ対面の生活に戻っており、人々は学校やオフィスに通う生活に戻っています。

そのような中で世界でも中国だけが再度ロックダウンという状態で、食料も一部には配給制となっており、その生活をWeChatでアップした写真を多数見ましたが、まるでこれまでと全く異なる不自由な生活で、足りない食材を近所で分け合うような光景もたくさん見られました。

それらのかいもあってか、いったんはコロナは終息しかけましたが、秋口から再度感染者が増え、再び行動制限が出たことで学生や若者を中心にデモ活動が活性化し大きな問題となりました。特に大都市の大学でのデモ活動は、ほぼ全大学で行われ、それに苦慮した大学側は冬休みを早く開始して帰省させることで鎮静化しました。

実は混乱はこれでは終わらずに、今度は都市部から地方へと全国規模での大流行となり、その感染率は非常に高くほぼ全員と言えるほどの感染者が出ています。

BBCニュース - 中国河南省、9割近い8850万人が新型コロナウイルスに感染=保健当局

BBC News Japan on Twitter: "BBCニュース - 中国河南省、9割近い8850万人が新型コロナウイルスに感染=保健当局 https://t.co/RhZCkWHCQT" / Twitter

 

他の国でも新変種のオミクロンやXBB1.5などの感染力が以前よりも強い変種が流行しており、日本でも死者数などが過去最多を記録していますが、中国はとにかく割合が高いのが特徴で世界でも桁違いの感染率です。

ワクチンが機能しないこと、実際の数字や調査を公表しないことなどにより、中国国民の中央政府への不信感は増強し、共産党の今後の運営に対して大きな影響があると想像されます。
これはもはや一国内での出来事として終わるのではなく、渡航者からの感染被害の拡大や、中国社会や経済の混乱による国際社会への影響という負の面も大きくなると予想されます。

加えてこのような中央政府の失態は、民主化の動きがより加速する可能性も秘めており、もしかすると中国という大きなシステム自体の変革につながることもありえます。


(4)急激な円安と物価高

ウクライナの紛争からすぐに為替はドル高円安に進みました。1ドル115円くらいだったレートは、どんどんドル高円安になり2022年の秋口には150円近くまで行きました。その後年末に日本もゼロ金利政策をやめて、久々になりますが他国と同様金利をに挙げたことで、今度はドル安円高に動き年末には1ドル130円くらいになりました。

久々の円安とウクライナ紛争による原油価格や穀物価格の上昇により、輸入品の価格上昇から日本国内の物価も上がりました。これは「コストプッシュ・インフレ」という外的な要因によるものであまりよくないインフレですが、身近な生活でもマクドナルドなどのチェーン店で何度も値上げをすることになりました。

海外との比較では日本はこれでも他の欧米の国々と比較するとインフレ幅は小さいほうです。しかも2022年の年末までゼロ金利を維持していたことを考慮に入れるなら、やはり経済の需給ギャップ(*)は依然大きくインフレの勢いも強くはないようです。
(*日本は国内の消費者の需要がサービスの供給能力に対して不足していること)

アメリカでは失業率が低下し、コロナ後の景気の上昇も伴いタイトな労働需給から労働賃金が上げ止まらない状況が続いています。FRBはそれに対応すべく金利の引き上げをつづけており年末にはFFレートで4.5%まで上がっています。日本との金利差が拡大したことが、ドル高円安の理由です。

ところで本当に怖いのは円安ではなく、発展途上国の通貨の急な下落です。1998年にはアジア通貨危機がありタイやインドネシアなど東南アジアの通貨が暴落し、これらの国から先進国へ急激に資本が流れるキャピタルフライトが経済を滅茶苦茶にしました。
途上国は先進国の資本と技術の流入があるときには成長率が年率5%を超えて堅調に推移しますが、いったん逆流するとその流れは止まらずに経済の血液であるキャッシュがまさに出血多量となり死に至るほどに傷つきます。

コロナが発生した2年前も途上国の通貨は危険回避の思惑から暴落しましたが、この時にはアメリカのインフレはなく金利差も存在しませんでした。
そういう意味ではアメリカ経済のインフレが今後どのようになるかにより、世界全体が右往左往することになりそうです。ちなみに2008年のリーマンショックの時も震源地がアメリカでした。

今後の見通しですがアナリスト達の見方では2023年前半はアメリカがインフレの過熱度合いを見て金利を上げる局面があるものの上げ幅は限定的で、後半にかけて金利も落ち着き、ドル安円高になっていくと予想される人が多いようです。ただ高金利は確実のアメリカ経済を痛みつけ、それは見方を変えれば世界の経済を痛みつけるということと同じです。

日本景気への影響ですが、一般的には緩やかな円安は他国と比べて海外での価格競争力がつくためGDPなど全体の経済指標にはプラスです。海外に行く私のような人間にとっては円の資産が相対的に減ることはかなり困るのですが、モノを輸出する人にしてみれば海外で売れた価格が相対的に上がるので利幅は当然拡大するという構造です。

円安進行は一部で悪く言われますが、トヨタ自動車などグローバル企業にとっては大変良い環境です。グローバル時代に価格競争力をつけるために、中央銀行や政府が自国通貨を安く誘導することを「近隣窮乏化政策 (きんりんきゅうぼうかせいさく)」と言います。各国の中央銀行はそのために金利を相対的に低くし為替を誘導し、輸出産業を保護しようとします。

では、いつも金利を低くすればよいかというとそうでもなく、その場合は国が発行する国債金利も低くなりファイナンス(資金調達)が難しくなるとか、景気が過熱しすぎてインフレになったりという懸念がありますが、日本は国内で資金が調達できることと、需要不足で景気が過熱しないというなんとも都合の良い状況だったので、その状態が維持されてきた背景があります。

また円安は以前ほど国内経済にメリットがないという意見も散見されます。かつては国内で生産して輸出しておりましたが最近は海外への工場移転もあり必ずしも良い面ばかりではないという意見もあります。
それと一般的には日本の自動車産業のように、部品メーカーが海外から原材料を輸入し生産するところは非常に苦しく、その部品を国内で購入して組み立てて輸出する大手企業にはメリットが大きくなるなどの構造もあり、この辺りは中央政府が税などを通じて富の再配分をしないと企業間の格差が大きくなるので、このあたりも注意が必要です。

今回は円安や物価高は、久々の我々の経済環境の変化でしたが、他の国々との比較だけでいえば、それほど神経質になるほどでもないと思います。


(5)解消しない国内の人材不足

自分の会社で人材系の仕事をやっていると、人材の需給状況などは日常業務から肌感覚で伝わってきます。
現在の新卒の就職活動は2024年卒の大学生・大学院生が対象ですが、既に一定数の学生が就職先をほぼ決めている状況です。
また転職市場も非常に採用意欲が高い企業が多く、特に若者については質、量ともに需要に対して供給が追い付いていない、いわゆる「売り手市場」となっています。

この状況は最近始まったことではなく、もう10年以上前から日本の労働市場において若者の数が足りずに、就職活動の早期化をすすめたり、給与や待遇面で優遇したりなどの工夫をしております。

一方で採用される労働者サイドで見れば、この売り手市場の中で少し異質なのは、少数の有名業種や企業に多くの人たちが集まり、そこだけ異常に競争倍率が高くなっており、その内定先だけで企業人としてのランク付けをするような風潮が強くなってきました。

例えば人気があるのは日系よりも外資系で、トータルな採用枠は日系と比べるとはるかに少ないところを偏差値の高い大学生たちが競ってそこに入ろうとしています。
多くの候補者が集まる企業のほうも、少数のスキルのある人やハイポテンシャルな人を採用するのには苦労しています。というものこの少数のレアアースのような存在を採用したい企業の間で取り合うことになるからです。
例えば情報系の経験があるエンジニアなどは全業界から求人があり、彼らを採用するためには年功序列を捨ててでも好待遇を用意したり、フレックス勤務の特例を認めたりなど企業側も様々な工夫をしています。

また業界間の人気の偏りも顕著であり、最近は商社人気が異常に高まっています。かつて商社と言えば体育会のイメージがありますが、近年商社に入っていく人を見ると女性や理系の人の割合が年々高くなっています。
商社の業態や目指す姿も時代とともに変わっており、近年は事業を自ら担える人材や、技術に明るいエンジニアなどを専門分野で選んで採用しているところも増えています。

このような状況ですが、本年2023年以降は以下の変化があると予想されます。
*外れてほしい予想もあるので、希望するわけではありません!

・在宅勤務とオフィス勤務のバランスを模索する
日系企業の部門採用が増える
・同じ会社でも年功序列給与の対象から外れる人でてくる
・若者の転職はますます盛んになる
・ホワイト指向とキャリア志向の二極化
・スタートアップや新産業への希望者の増加
・スキルや経験により賃金格差が急拡大
・社内の人材不足が危機的になる
・労働力不足から単純労働でも賃金が上昇し始める
・シニア人材の活用をまじめに行う会社が出てくる
・海外へのアウトソーシングが増える
・日本が働かない国になって競争力を失う
・国全体がお役所仕事ばかりになる
・コンサルや銀行が人気で実経済を作る人がいなくなる
・できる人たちが海外に流出する

 

(6)IT企業は受難の時代か?

昨年はGAFAMをはじめとするIT企業にとっては久々の受難の時代で、株価が下がりリストラを余儀なくされた会社がたくさんでました。

なぜそうなったかといえば、コロナ中は多くのIT企業にとっては追い風であり業績を伸ばし株価も上がったのですが、その反動が出ました。また金利の上昇は株価にはマイナスで、そのリバウンドがかさなってしまい経営陣はリストラを余儀なくされました。

特に株価の下落幅は大きく、元facebookのメタ社の株価はピーク時の1/3まで下がっており、もはや世界の時価総額トップ10には全く入っていない状況です。

(参考)
会社名    時価総額(2022年末) 年間株価上昇率
1    アップル 2.07兆ドル    -26.8%
2    サウジアラムコ 1.88兆ドル    -1.4%
3    マイクロソフト 1.79兆ドル    -28.7%
4    アルファベット 1.15兆ドル    -38.7%
5    アマゾン 8,569億ドル    -49.6%
6    バークシャー・ハサウェイ 6,818億ドル    4.0%
7    ユナイテッドヘルス 4,954億ドル    5.6%
8    ジョンソン&ジョンソン 4,618億ドル    3.3%
9    エクソンモービル 4,542億ドル    80.3%
10    VISA 4,400億ドル    -4.1%
11    テンセント 4,051億ドル    -26.9%
12    JPモルガン・チェース 3,933億ドル    -15.3%
13    テスラ 3,890億ドル    -65.0%
14    台湾セミコンダクター 3,863億ドル    -38.1%
15    ウォルマート 3,824億ドル    -2.0%

これは2022年末の世界の時価総額ランキングですが、株価が下がったとはいえアップル、マイクロソフトなどIT系企業は上位にいますね。
ちなみに他のセクターでいえば原油高のメリットを享受するサウジアラムコエクソンなども元々高かったですが、やはり上位に残っています。それ以外ではコロナの影響もありヘルスケアの銘柄もちらほらします。
またここで出てくる企業は常連が多いので、10年くらいではそれほど大きくは変わっていません。


さて話をIT企業に戻すと、株価や業績は頭落ちになったのは事実でありますが全体としては依然堅調なものが多数です。むしろ考え方としては過熱気味でバブルに近かった狂乱状態が正常に戻り、今後はまた堅調に推移すると考えるのが妥当かもしれません。

もちろんこのセクターは変化が大きくかつ新陳代謝が激しいことは今後も変わりませんが、産業全体として見た場合はやはり有望な分野であることは変わりはないでしょう。
企業の側からするとどんどん新しいサービスや技術が出てくる、本当に忙しくて疲れるところではありますが、それゆえに良いものがどんどん出てきて世界を変えていく世界ではあり続けることが想像されます。

懸念する点を挙げるなら、企業が大きくなりすぎて社会への影響が国を超えるくらい大きくなったことで国家による統制なり制限がかかることも予想されます。
または中国のように政府が突然入ってきて管理を強めることもあるかもしれません。

大量データやSNS情報は国防上や世論形成にも大きな影響を与えうるため、その使い方に対して今後どのように扱うかは大きな論点です。実際facebookyoutubetwitterが特定団体の意見を支持するか否かという裁判官や警察みたいな機能を求めらるシーンは出てきており、それを民間企業が独自の判断で行えるかはかなり難しい問題です。


(7)日本のスタートアップの将来

最近は民も官もスタートアップを盛り上げる機運になっています。制度はたくさんできていて投資家まわりの環境も整っていますが、まだまだ社会を大きく変えるような会社はそれほど多くはありません。
日本のスタートアップの環境自体は世界的に見ても悪くないと思います。まずは世界で3番目に大きな国内マーケットがあること、投資家が沢山いて資金調達が難しくないこと、東京証券市場への上場のハードルが高くなく、また上場廃止の基準も厳格でないこと、起業家の数が少なくライバルがいないこと、など世界的に見れば相当恵まれている環境にあると個人的には思います。

もちろんマイナスの要因も同時に存在しており、社会全体がリスク過敏であること、成功者の数が少なくロールモデルが少ないこと、大手企業が強すぎること、雇用環境が良く起業する必要性を感じないこと、社会が豊かになりハングリーさが足りないこと、教育自体が従業員(サラリーマン)を作る設計になっていること、などがあります。

全体として環境自体は悪くないもののユニコーン企業の数は2022年11月時点で6社の世界15位となっており、まだまだ成果は表れていない状況です。

<世界の国別ユニコーン社数ランキング> 
*InvestNavi(フィスコ社運営)より 2022年11月
https://fisco.jp/media/unicorn-company-about/

    国名    企業数 割合
1    アメリカ    487社 (50.8%)
2    中国    171社 (17.8%)
3    インド    53社 (5.5%)
4    イギリス    37社 (3.9%)
5    ドイツ    25社    (2.6%)
6    イスラエル    21社    (2.2%)
7    フランス    20社    (2.1%)
8    カナダ    16社    (1.7%)
9    ブラジル    15社    (1.6%)
10    シンガポール    11社    (1.1%)
10    韓国    11社 (1.1%)
(中略)    
15    日本    6社 (0.6%)

別のソースでは12社となっており、こちらの会社は以下の通りとなっています。

<日本のユニコーンカンパニー(2022年10月)>
*STARTUP DB「国内スタートアップ評価額ランキング最新版(2022年10月)」より
(運営:フォースタートアップス株式会社)
https://startup-db.com/magazine/category/research/valuation-ranking-202210

1)Preffered Networks(3,539億円)機械学習
2)GVE(2,245億円)電子カルテプラットフォームやCBDCプラットフォーム開発
3)スマートニュース(2,004億円)ニュースアプリ
4)SmartHR(1,732億円)人事労務管理SaaS
5)TRIPLE-1(1,641億円)半導体システム「KAMIKAZE」
6)スリーダムアライアンス(1,522億円)次世代電池の開発
7)クリーンプラネット(1,457億円)新水素エネルギーの実用化
8)Spiber(1,457億円)バイオ素材開発
9)TBM(1,336億円)紙・プラスチック代替新素材「LIMEX」
10)Mobility Technologies(1,244億円)タクシーアプリ「GO」
11)アストロスケールホールディングス(1,161億円)宇宙ごみ除去
12)HIROTSUバイオサイエンス(1,042億円)線虫を利用したがん検査


ユニコーンが少ない理由は一般的に言われているように、スタートアップの調達金額が他国と比べると格段に少ないことと、起業家の数が少ない事実で説明できます。
ではたくさん起業して多額の投資をすればよいかというと、たぶんその通りで、多額の投資に値する大きなビジネスプランを作りそこを目指せば状況は好転すると思います。

しかし大きなビジネスプランを描くということに対して投資家側もあまり期待していないこともあり、堅実な小さめの上場が多くなっています。
なんか小さな成功だけで満足していて、それを社会で成功者として称賛するという、あまり望ましくない状況が残念ながら存在しています。

それでも以前と比べるとスタートアップが沢山出来てきて、上場なりエグジットなりが多くいなり産業を作る機運がでてきたことは一つの進歩であり、そこから次にどんどん大きいところを目指す流れがあることをポジティブに捉え、今後はそれを加速していけばよいと思います。

ちなみにスタートアップ戦略や資本政策については、コンサルの本業で何度も講義や講演をやっているので以下の資料をご覧ください。

 

連続起業家の織田による 「起業のHow To」徹底解剖ワークショップ(第一回)
企業全般についての概論
ケースワーク例:創業フェーズで失敗する起業事例*日本語
https://www.slideshare.net/kazuakioda/how-to-240573346

 

連続起業家の織田による 「起業のHow To」徹底解剖ワークショップ(第二回) 
事業ドメインの決め方と資金調達
ケースワーク例:資金調達で失敗したスタートアップの事例*日本語
https://www.slideshare.net/kazuakioda/how-to-241776522

 

連続起業家の織田による 「起業のHow To」徹底解剖ワークショップ(第三回)
組織と人材
ケースワーク例:採用/グロースで失敗したスタートアップの事例*日本語
https://www.slideshare.net/kazuakioda/how-to-243142590

 

”Architecting successful startups” *英語と一部が日本語です
https://www.slideshare.net/kazuakioda/archtecting-a-successful-startups

 

”Strategy and Finance for Starups@IISc” *英語と一部が日本語です
https://www.slideshare.net/kazuakioda/strategy-and-finance-for-starupsiisc

 

”Strategy and Finance for Startups -Case studies and Typical Failures”*英語と一部が日本語です
https://www.slideshare.net/kazuakioda/strategy-and-finance-for-startups-case-studies-and-typical-failures

 


(8)コロナ、ウクライナ、円安、、、今後の世界

最近数年間で近年では想像しなかった出来事がいくつかありました。
いえ、もしかすると我々は毎年のように「最近おかしい?」とか言っているのが常かもしれません。
いずれにせよ、異常と思われた出来事も早かれ遅かれそれがいつの間にか”日常”になり、また新しいことがでてくると、「今年も未曽有の出来事があった」とか言っているかもしれません。

ウクライナ紛争が世界大戦に至る可能性は現在でも否定できませんが、それは仕掛けたロシアも恐らく望んではいないでしょう。

中国による台湾進攻も、もしかすると近いかもしれません。おそらく中国は今回のウクライナの情勢を見て、もし自分たちが台湾に軍事侵攻した時のシミレーションをしていると思います。
これがウクライナと同じ状況になるのであれば、NATOや欧米は経済制裁以外は何もできず、そうしているうちに時間がたち、台湾を自国領として事実上認めさせると当然考えています。

その場合、世界の半導体の工場である台湾を手にすることは中国にとって経済的に非常にメリットが大きいものの、ウクライナで起こったことと同じように世界のサプライチェーンと経済圏へのアクセスを制限されることで自国の豊かさをあきらめざるを得ないという状況に陥ります。
これは決して中国全体を豊かにすることにはならずに、もしそのような状況になった場合は、今度は市民が黙っていないでしょう。その時に体制がどうなるかは誰にもわかりませんが1989年の天安門事件のように市民を制圧するのか、もしくは政治を含めた社会システムが変わるのか、それは誰にもわかりません。

少なくとも自分が見た上海の若者がカッコいいスタバで写真を撮ってSNSににアップしている生活から、現在のロシアの生活に戻ることは想像しにくいです。


現在、国際情勢はどんどん複雑化してますが、変わらないことは我々はその中でかなり密接に相互依存しながら生きていて、それがなくては現在の繁栄はありません。
したがってもし良識的に考えるのであれば戦争などはしないほうが良いに決まっており、おそらく多くの人々もそう思っています。

しかし一方で豊かな生活のためには、資源を確保したり、モノを作ってお金を設けたりということをしないと実現できないことも事実であり、ここでは武器を使わない経済の戦いがあります。
この経済の戦いには資源の確保や、取引先相手との交渉などで実際の武器が使われることが多々あり、特に窮地に陥っている時ほど、その実際の武器が登場することは歴史を見ればわかります。そして多くの場合、紛争が起こるのは先進国同士ではなく、どちらか、または両方に途上国なり貧困国があることが多く、対立する2国にそれぞれ先進国が資金や武器を提供しているということが多々あります。
北朝鮮、東欧、中東、アフリカ諸国、インド周辺など紛争が起こりそうな場所はたくさんあります。我々は自分たちのエゴを捨て、どこまで理性を保てるのか試される時期なのかもしれません。


一方コロナについて各国の状況を見てみると、収束に向かうにつれて経済の復興がおこってきます。人々はいろいろなところへ出かけるようになり、世の中は貯めていた潜在需要で経済的にも盛り上がることが予想されます。
特にこれまで移動が不自由であったものが一気に解放されることで不振だった旅行業や観光業、それに伴う飲食なども復活するでしょう。
コロナで追い風だったIT企業はいったん厳しい道になりますが、それとて全体のIT化の流れからすると一時のことのように思えます。

ちなみにIMFによる世界経済の見通しによると、物価上昇と先行き不透明感の中で成長は鈍化して2021年の6.0%から2022年には3.2%へ、2023年は2.7%となると予想しています。
普段の成長率がだいたい3%程度ですので、それほど良い状況であるとは予想していないようです。

世界経済見通し (WEO) *2022年10月 IMFのサイトより
物価上昇と先行き不透明感

www.imf.org

ちなみに世界銀行の予測はIMFよりさらに悪く、2023年の経済成長は1.7%と予測しています。

世界経済予測 *2023年1月10日 世界銀行サイトより

www.worldbank.org

 

ところで、コロナとウクライナ紛争という少し異常とも思える出来事が落ち着いたとすると、元々あったけど少しの間忘れられていた問題が思い出されます。例えば環境問題やエネルギー問題など本来人類として取り組まないといけなかったことが沢山残っており、それらをSDG'sという目標で取り組もうとしていました。

理想と現実はなかなか相性の悪いペアですが、相性が悪いながらもどこかで折り合いをつけて解消するためには全体を見て双方の利害を考慮したうえで着地点を探る必要があると思います。
非常に政治的なプロセスになることも多いと思いますが、ウクライナ情勢のような武器に頼らない解決方法を人類として選択しなければ、どんどん社会全体が不幸になることは我々は学ぶべきだと思います。

 

長くなりましたが、今年の雑感は以上です。
感想などいただけると大変うれしいです!


(2023/1/13)。。。