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『事業創造力』をどうやって身につけるか?

最近スタートアップや新規ビジネスについての社会ニーズの高まりとともに、個人としてどうやってそのスキルをつけるのか?と話題になることが多くなってきました。

私はいろいろな国のビジネススクールでスタートアップの戦略の講義を行っておりますが、正直「事業創造」は教えることが難しい分野だと思います。私自身もなぜアイディアや発想が自分の頭からでるのか、それを説明することはできません。市場の規模やマーケティングファイナンス(資金調達)のことは教えられますが、想像力や発想のところだけは自分も言語を使っていないので説明しようがないのです。

よく事業戦略はリサーチをして戦略を立てて、それを実行する!という正論はかっこよく聞こえますが、少なくとも多くの事業を経験した自身の経験と、またコンサル等で身近な事業をつくる現場を長年見た経験としては、そのように机上の議論でしっかり計画し、それがそのまま実行されて成功したというシーンは、ないとは言いませんがかなり稀なケースであると思います。


そのような状況でも、いったんサービスみたいなものが見えてくると、それを改良したり顧客がどこにあるか明確にしてターゲットを絞ったりすることはできます。しかしゼロの状態から作る時にはとにかく何も見えない状態で、しかも何でもやってよいという中で何を選択するのかはかなり難しい問題であることは確かです。

少なくとも初期における商品設計(プロダクト・デザイン)は見つけるときには難産になることがあり、いったん作ってみたものの全く市場で受け入れられなかったりとか、全く儲かる方法が見つからなかったなどということは実はよくある話で、その中から試行錯誤してだんだん売れるものが見えてくるというパターンが非常に多いと思います。



そのような状況ではありますが、プロダクト・デザインを創る時のいつくかのパターンも分かっているので、本日はいくつか紹介しようと思います。
 *特に網羅性はないです


(1)既存の市場に対してサービスの提供の仕方を変える
オフラインからオンラインへのシフトなどがこれにあたります。市場が元々あるので比較的パターン化して類推しやすいため多くのプレーヤーが参入するため差別化は難しく、資本力、またはスピードの戦いになります。

(2)地域ごとの情報差を利用してオリジナルを他の場所で土地でコピーして早期実現する
いわゆる「タイムマシン戦略」がこれにあたります。インターネットの黎明期である1990年代の日本のサービスはこれが多く、それで地位を築いたのがソフトバンク孫正義さんです。
彼はUSのネットサービスをライセンスとともに日本に導入して、yahooなど現在も残る日本の中核となるネット企業を育てました。


(3)ユーザーを早期に囲い込みそのユーザーが欲しいものを他から取ってきて加える
インターネットの多くの企業が取る戦略がこれで、例としてはLINEなどのSNSが挙げられます。ユーザーを囲い込むためサービスを無料にしてとりあえず使ってもらい、その後ユーザーに対して商品を売り込んだり広告を無理やり見せたりして後とから収益化することを計画します。


(4)アナロジーを使い近いビジネスを少し改良して焼き直しする
基本のビジネスの仕組みを理解して、それを少しだけ改良してコピーする戦略で、こちらも結構ポピュラーです。これには抽象思考能力が必要で、要は本質的に何をすれば機能するか?という原理原則を把握し、その原理を具体事例に当てはめていく方法です。


(5)未来の生活や姿を想像する
これはドラえもんの世界です。実際にドラえもんは真面目に見るとかなりイノベーティブな作品で、「どこでもドア」、「タイムマシーン」など、こういう発想力が事業にもかなり役立つと思います。

実際に私もビジネススクールの事業でも、プロダクトが見えない時には映画館に行くとよいよ、と真面目に話をしています。理論上とか市場の可能性とか、あれこれ教室で考えるよりはSF映画でも見たほうが想像力が活性化されるようにも思えますがどうでしょうか?



色々見てきましたが、新しいものを見つけて創ることは簡単ではありません。最近はこのようなニーズの高まりから想像力を伸ばす「デザイン・シンキング」という分野も人気が出てきて、ビジネススクールなどでも学ぶ人々が増えています。


ただし私見では「想像力」を学ぶということは、言語を使って理論を学ぶこととは全く異なった難しさがあると思います。
その方法については現在も模索中ですが、最近のfMRIを使った大脳生理学や臨床心理学など科学の検証などで分かり始めたヒントを以下で共有したいと思います。


◆想像力は遊び心より生まれる
◆アイディアは集中していない時にふと生まれる
◆論理では導けないものがある
◆体を動かしていたり何か違うことをしている時に生まれることもある
◆考えつくしていったん忘れた後にふと湧き出てくる
◆適度にリラックスした状態が生まれやすい(お風呂、散歩)



このような状態で仕事をできるとよいのですが、なかなかオフィスの中でリラックスしてふらふらしていることは正直やりにくいと思います。普通に見れば遊んでいるように見えますが、まさに遊んでいないとアイディアが出ないのであればオフィスに来てはいけないということになってしまいます(笑)。

多くのいわゆるエリートたちの良くとるアプローチで受験勉強のようなやり方をしていては難しいというのが正直なところです。
いろいろプレッシャーがあったり、規則が厳しすぎたり、厳格すぎる社風だったりという場所からは確率的に難しいという科学の結果を受け入れる場所が必要であり、ある意味GAFAなどはきれいなオフィスでそういうことを目指しているということを認識すべきだと思います。(彼らも実現にしているとは限らない)


Goodfindでは分析で使う「ロジカルシンキング」が講座になっていますが、これからはこれとは対極的な「クリエイティブ・シンキング」の講座も今後充実できれば良いかなと考えています。
前のほうでも少しのお話ししましたが、「想像力」については科学の研究も進んでいますので、また機会があればお話ししたいと思います。