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(新春の雑感)2024年の世界はどうなる?

新年あけましておめでとうございます。昨年1年の振り返りをかねて、今年もざっくばらんに本年の見通しなどについて書いてみます。
特に網羅性とか客観性など細かいことは気にせず、特別な目的や関心をもなく、日ごろの周囲の情報を整理する程度のものです。

毎年のことですが、何かを調べて書いているわけではなく、記憶だけ頼りにしているので正確性や客観性はないものとして、話題提供くらいに軽く読んでもらえると嬉しいです。


*長文注意!(約17000字 汗)
*事実誤認、誤字脱字、不適切な表現など見かけましたら、そっとDMでお知らせいただけると大変ありがたいです。

(参考、昨年(2023年)の記事はこちらへ)
goodfind.hatenablog.com



=目次=

(1)2023年の振り返り
(2)2024年の予定を見てみると
(3)ウクライナ、ガザ、台湾?各地の紛争はどうなる?
(4)経済はどうなるか?(景気、インフレ、雇用、成長など)
(5)日本の経済や産業の今後は?
(6)スタートアップや技術動向について
(7)2024年はここに注目してます


(1)2023年の振り返り

2023年もいろいろな事件が起こりました。前年の2022年2月に勃発したウクライナ紛争は2023年末においても、いまだ出口が見えず硬直状態なのに加え、2023年10月にはイスラム教過激派ハマスによるイスラエルの襲撃と、それに対するイスラエルの反撃は双方の多くの民間人が犠牲になっており、こちらも収束の気配はありません。

この記事を書いている2024年現在も元旦に能登半島で大地震が起き、さらに翌日の1月2日には羽田空港で航空機の事故もありました。新型コロナから様々な活動が元に戻り、経済も回復する中、なかなかすべてはうまくいかないものですね。

昨年の世界経済はインフレに悩まされました。止まらぬインフレに対して各国の中央銀行(日本では日銀にあたるところ)は金利を上げて対抗しようとしましたがなかなか鎮静化せず、一方で金利の上昇は景気への悪影響が懸念されました。結果的には年末になんとかインフレも落ち着き、思ったほどは景気への悪影響もなく年を越した感じです。

そのような中、日本だけがデフレ脱却を完全に果たすためにゼロ金利に近い状態を維持し、その結果他国との金利差から何年ぶりかと言われるレベルの円安となりました。円安は海外から原材料や食料を輸入するため、コストプッシュ型のインフレを引き起こし、日本国内の物価が高くなる現象が前年に続いて起こりましたが、それ以上に購買を控えるデフレの影響からか、他国ほど深刻なインフレとはならず、結局金利を上げるスタンスを見せるだけで大きな金融政策の変更はありませんでした。このあたりは新しく日銀総裁になった植田和男氏が今年に春あたりにどのような金融、財政政策をとるかが見ものですが、比較的バランスを見ながら意思決定しそうな植田氏のことですので、ドラスティックに金利を上げたりとか金融緩和を急ぐということはないのではないかと個人的には見ています。

他の社会面での出来事としては、WBCワールド・ベースボール・クラシック)という野球の世界大会で日本は優勝しました。多くの人は大谷選手の投打にわたる活躍に声援を送っていたのではないでしょうか?(私もその一人)
最後の優勝シーンでは大谷”投手”が9回最後の打者として迎えたチームメイトのトラウト選手にフルカウントから、外に逃げるスライダーでみごとに空振りの三振をとりました。
またその前のメキシコ相手の準決勝では1点ビハインドの9回裏に、それまで不振だったヤクルトの村上選手が左中間をやぶり、一塁からは代走の周東選手が快足を飛ばしてホームインしました。
二試合とも私はTVの前で家族とライブで見ておりましたが、本当に素晴らしい試合で、その前年のサッカーワールドカップにつづき、世界で活躍する日本人にたいして大変誇らしい気持ちを持ちました。スポーツの世界もグローバルに活躍する人が沢山出てきて大変よいことだと思います。

 


個人的な活動としては、2023年は8月にシンガポールと台湾、9月はインドネシアとインドに行きました。活動内容はいつものように大学での講義と現地でのイベントなどへの参加です。シンガポールとインドは昨年も長期滞在をしたので特に変化は感じませんでしたが、インドネシアはコロナ前の2018年以来になるので5年ぶりです。また台湾は9年ぶりの訪問になりました。
インドネシアは鉄道などのインフラが整ってきて、また日本のコンビニが多くなり和食のレストランが多くなってました。台湾は都市の中心である台北駅の周りについてはそれほど変わっていませんでしたが、円安もあり物価が日本よりかなり高くなってたのが印象的です。

このあたりの様子についてはブログの以下にまとめてありますので、関心があればご覧ください。

久々のインドネシアの生活と現状(滞在メモ)
https://goodfind.hatenablog.com/entry/2023/10/02/003337

9年ぶりの台湾訪問メモー次回の旅行のため備忘ー
https://goodfind.hatenablog.com/entry/2023/08/30/003238

 

(2)2024年の予定を見てみると

まず政治的には国のトップを決める大きな選挙がいくつかあります。まず最も世界に影響が大きいアメリカ大統領選挙が11月にあり、トランプ氏の返り咲き?現職のバイデン氏再選?または他の候補者か?などが争点になってきます。前回、前々回の大統領選挙同様、今回の選挙も予測は大変難しく、それぞれの政党が誰を候補者に挙げてくるかについても意見が分かれています。

もう一つの大きな選挙は1月に台湾総統選挙があり、現在のところ民進党の頼清徳氏がわずかにリードしており、このままいけば現状のシステムが維持されると考えられていますが、これだと北京の共産党のコントロールが難しくなるので、なんらかの策を施してくる可能性もあります。中国共産党はこれまで台湾を「一体化」という表現で自国の一部と主張しており、半導体の世界的な生産地であるこの地をどのように扱っていくかについては世界中が心配しているところでもあります。

あと一つトップを選ぶ選挙という意味では3月にロシアの3月にロシア大統領選挙がありますが、これは現職のプーチン氏以外の結果はないでしょう。現状のロシアは対外的に孤立しており、その影響もあり国内はかなり厳しくなっていますが、それゆえ強いリーダーが求められそれはプーチン氏以外は考えにくいです。

これら3つの選挙の結果は今後の政治、経済、社会への影響が非常に大きいため、それぞれの分野の専門家が、それぞれの場合についてシナリオを作り予想しているところです。


もうひとつ大きな国際的なイベントとしては、夏にパリでオリンピックがあります。前回の東京オリンピックはコロナの影響で予定より1年遅れた関係で、すごく間隔が短い印象があります。今回も日本の選手団の活躍が期待できるのではないかと勝手に期待しております。理由としては前回の東京オリンピック、サッカーのワールドカップ、野球のWBCなどを見ていると日本の選手たちが世界で戦うという機会が多くなり、そこに適応し活躍しており、彼らを見て他の選手たちも彼らを見て夢を持ち、確固たる自信も持って取り組んでいるからです。これはビジネスパーソンたちも見習うべきで、この世界からも世界で活躍する人がどんどんでてきて、それを若い人たちが見て、憧れて、真似ていくことがスポーツのように出来てくると良いなと思います。

 

(3)ウクライナ、ガザ、台湾?各地の紛争はどうなる?

本当、これからどうなるんでしょうか?ウクライナについては、そろそろ停戦したいと双方とも思っているでしょうが、両者とも傷跡は大きく、その割には得るものは多くないかもしれません。ロシアとしては一定の領土を確保したという点では成果と言えるでしょうが、国際社会において孤立が強まったことや、国内が戦争の間に経済も社会も相当傷んでおり、天然ガスや資源を独占するオリガルヒ(日本でいう財閥というか経済マフィアみたいな存在)のみが資源高の恩恵にあずかり、他の一般の国民はどんどん貧しくなり疲弊していることが予想されます。しかし、そういう状況だからこそ強いリーダーシップが求められており、そういう点ではプーチン氏に変わる指導者はしばらく出てきそうもありません。ここはロシアの抱える大きな矛盾で、本当は90年代に民主化して自由や競争のルールのもとに先進国の仲間入りするシナリオでしたが30年たった現在を見ると、旧ソビエト連邦の非効率でブルジョワ中心の既得権益社会から全く変わっていないようにも見えます。
このままでいくとロシアは国としては資源国としてそこそこ外貨を稼げるとは思いますが、国内にいる人々を幸福にしないシステムはサステイナブルになることはないと思います。


次にあげたいのは、2023年10月にハマスと思われるパレスチナ地区の過激派がイスラエルを突然襲い多くの人質を取るという事件がありました。それに対してイスラエルは相手方の民間人を巻き込みながら反撃しましたが、その過激さに対して世界中から非難の声も上がっています。これは親イスラエル国であるアメリカ国内においても批判の声は大きく、経済界で強いユダヤ資本は情報統制をしたいものの、ネット上では多数の反イスラエルの動画や情報がながれ、この点でもアメリカは新たな分断となっています。

ハマスの襲撃はプーチン大統領の誕生日である10月7日であったことから、これは裏でロシアが手を引いていて、それをイランが取りまとめた、などの説も流れていますが本当のところは全く確認できるはずもなく、少なくとも結果的には多くの関係のない犠牲者がたくさんでて、中東地区の不安定は常に原油高につながるところだけは毎回同じです。
イスラエルの現首相のネタニヤフ氏は強硬右派「リクード」に所属しているため予想された結果ではありますが、同国は常に周囲に対して紛争を抱えている歴史的な状況は、過去を引きずりすぎて誰も平和にならないので、どちらがよいとかいうことでなく、双方とも「足るを知る」という現実的な妥協をすべきだというのは火の粉の飛んでこない日本にいるから思えることかもしれません。

ガザの火の粉は日本へは飛んできませんが、残念ながら火種となる要因は日本周辺にもいくつかあり、いわゆる新旧の社会主義体制のロシア、中国、北朝鮮は飛行機で数時間の距離にあり、実際に北朝鮮は定期的に日本海や日本国土に向けてミサイル実験を続けており昨年は何度か警報も出たくらいです。
北朝鮮の経済や社会の困窮度合いにいは、いまさら知らない人は多くはないですが、それでも情報統制をしていて、人々の入出国をかなり制限している同国は、内部の人々も外の世界に触れることができずにいるのは悲しいことかもしれません。(先進国的な見方でしょうが)
北朝鮮に対しては以前トランプ氏が大統領の時に一瞬対話するかに見えましたが、彼が大統領でなくなった瞬間からそれもなくなり、元の孤立の状態に戻っています。中国は仲介役としては最も近い候補なのですが、彼らは彼らで国内外に多くの問題を抱えており北朝鮮に注意を向ける余裕はないように見えます。現在はウクライナとガザの紛争で欧米もいっぱいいっぱいであり、極東の事には構っているヒマはない状態です。
残念ながら我々日本政府もこの北朝鮮の行動に対して効果的に対応できているとは言い難く、政党同士のあら探しと揚げ足取りばかりしているのは大変遺憾に思います。

経済力が大きくない北朝鮮とは対極的な隣国が台湾で、ここは国際的にも大きな火種になる可能性が高いところです。今年9年ぶりに訪問した台湾は表向きは以前と変わらず日本の都市のように少し狭くてゴミゴミしているとこもありますが、少なくとも表向きは人々が日本と同じように平和に暮らしており、国境封鎖とか経済封鎖などの気配はみじんも感じられませんでした。売っているものや食べているものも以前と変わらず充実しており、夜市(よるいち)と呼ばれる屋台は日本人からすると風情のある光景であり、日本のお祭りの出店が毎日でているかんじで、とてもレトロな感傷に浸ることもできます。
その一方で9年前と明らかに異なっているのはむしろ外部の状況で、ITの急速な普及は世界的に半導体の需要を大きくし、またこのチップの有無により経済全体の強弱も左右するところまで来ています。

実はこの台湾をめぐる情勢は、米中二極化の構図の中でも大変重要なものとなっています。これは軍事という点でもちろん大きなウエイトをしめておりますが、半導体の技術は経済の源泉であるだけでなく、そこで得られる情報が軍事や世論、経済など国際社会を管理する不可欠のツールとしても大変重要な要素です。

その中国ですが経済的には非常に苦しい状況が続いています。昨年は若年の失業率が20%を超え、それでも過小すぎるであろうという世論があったためか、その数字自体の公表をやめてしまいました。経済の不調は対コロナでの行動統制の結果などのという単純なものではなく、不動産の不良資産が多いとか、ずっと続いた経済成長が止まったとか、経済政策が悪いとか様々な見方がありますが、現在の一人当たりのGDPが1万ドルくらいの水準は開発経済学では「中所得国の罠(*)」と呼ばれる水準で、多くの国々がこのあたりの経済レベルで成長がとまる例が多いという丁度そのあたりに来ています。

(*)中所得国の罠 *wikipediaより
中所得国の罠は、開発途上国が一定規模にまで経済発展した後、成長が鈍化し、高所得国と呼ばれる水準には届かなくなる状態ないし傾向を指す通称。2007年に世界銀行が『東アジアのルネッサンス』にて、同現象を形容する言葉として用いたのが初出である。

中国にとってひとつ残念だったのは、昨年共産党ナンバー2の指導者で経済担当の李克強氏が68歳でなくなったことでした。現在の中国の経済状況は誰かの失敗というよりは、高度成長が終わった後にでている典型的な「中所得国の罠」なのであれば、経済博士である李克強氏がその手腕を生かせる場面は多かったはずです。そういう意味では彼の突然の死は、国にとっても残念としか言いようがありません。

この中国の状況は日本の90年代と対比されて検討されることも多く、欧米の識者による中国経済の見通しを語る文脈では、非常に多く日本の事例との比較で話されることが多いです。実際に不動産バブルとその後の不良資産の問題という点では日本の90年代と似ているという意見が多く、このあたりは野村総合研究所の主席エコノミストであるリチャード・クー氏が唱える「バランスシート不況」と同じように見えます。(彼自身もそう主張している)

仮にそれが正しかったとすると、不良資産の見積もりをして、順番に処理していくことが常套手段なのですが、その過程においては膿を出すための痛みをともなうことになるため、なかなか着手に踏み切れないのは日本の失敗から学んでいると思います。
実際に死んでいるゾンビ企業の多くが国営企業だったとすると、身内を切ることは大変ですし、また融資の元となっている機関が銀行の融資だけでなく、シャドーバンキングという得体のしれないものであった場合には、影響の範囲が予測しにくく社会の混乱度合いも図れないことから、実施に躊躇するのはわからないでもないです。しかしながら教科書的なきれいごとを言うのも無粋ではありますが、不良資産をそのままにしておくと今度は信用不安につながりお金の流れは悪くなるに加え、人々の心理的な不安もつづくことから日本よりももっと悪くなる可能性もないとは言えません。実際、そのような主張をするエコノミストは非常に多いです。

このような状況の中、経済的、軍事的に何か外で解決を求めようとすると、その対象となるのが台湾です。もしアメリカの次期大統領がトランプ氏になった場合、彼は基本的にモンロー主義アメリカは他国の干渉をしない主義)を主張しているので台湾有事でも何もしない可能性があります。そのケースでは日本は独自に日本の立場をはっきりさせ、しかるべき行動をとれるように準備する必要があります。はたして今の日本の政治は本当に大丈夫でしょうか?私にとっては政治の話は考えれば考えるほど気が滅入るのでこの辺で辞めます。

中国について暗い話ばかりを取り上げましたが、なぜ彼らがアメリカにこれだけ痛み付けられるかという理由を考えてみれば、それは経済的、技術的に手ごわいからという視点も見えてきます。実際にIT、AI、ドローンやEVなど新しい分野では世界をけん引しています。その理由は日本から見ると良くわかるのですが、とにかく勤勉に学習します。人口が多いため生存競争は厳しく、また試験で社会的、経済的な地位が決まるシステムは、必然的に学業に秀でた人々を大量に作り出します。またこのシステムは集団として同じ規範に従う勤勉なマインドセットも同時に醸成するため、製造業にはむいており、それゆえ現在の電子機器の多くは同じようなシステムを持つ中国、韓国、台湾、日本のこの周りで多くのものが作られています。実際にiPhoneやPC、電子デバイスも欧米ブランドでも中国製のものが多く、韓国、台湾、日本で作ったパーツを中国で組み立てるという流れができています。

競争過多の社会なので中国人の幸福度ランキングは残念ながらあまり高くりません。そして、それが少子化などにもつながっていますが、その学力の量と質を考慮すると世界のトップレベルであることは疑いようもなく、アカデミアの世界でも論文数や特許数などでトップレベルを維持しています。

14億の人口を統治することは大変なことだと思います。今は大変な局面に来ていますが、歴史から学び合理的な判断ができれば、この教育水準の高さで解決できることも多いのではないかと期待したいです。

 


(4)経済はどうなるか?(景気、インフレ、雇用、成長など)

これまでも述べてきましたが2024年にはアメリカ大統領選挙があり、その結果が世界に大きな影響を与えます。今のところ民主党からは現職のバイデン氏、共和党からはトランプ氏が候補として上がっていますが、実際に誰が出るかもまだ明らかではありません。

どちらの政党が大統領になったとしても変わらないことも多く、その一つは経済政策が最優先であるということです。軍事ついては実は多くのアメリカ国民は国外のことについてはそれほど関心を持っておらず、また自国が戦争などで攻められた経験もないため自分のところが良ければ他はあまり気にしないというスタンスが「モンロー主義」です。バイデン氏の民主党は比較的アメリカでも教育水準が高い人が多く国際情勢にも関心があるため、ある程度アメリカの国際社会での警察機能の必要性などを理解していますが、対する共和党はその逆で前述の「モンロー主義」の立場で、俺たちは俺たちのことすればいいんだから他はみんなで上手にやって、という立場をとります。本当はそうすると世界の警察がいなくなることで地域紛争が増え、これが経済を停滞させて結局アメリカ経済にも悪影響として戻ってくるので困るはずですが、トランプ氏は長期的な視点とか国際社会での役割などには相対的には関心が低いように有権者には見せています。(実際はどうなのかは分かりません)

この国際社会でのアメリカの特に軍事的なスタンスを除けば、個人的にはどちらの政党が勝っても実は大差がないのではないかと予想しています。大差があるかどうかは程度の話なのですが、少なくとも最近20数年間のアメリカの政局運営や経済政策を見ていると大統領の権限は確かに強いのですが、上院・下院の勢力拮抗もあり、思ったほど特色を出せないまま変われないアメリカになってきているという印象を持っています。
例えばオバマ大統領が就任した時には人々はオバマケアなど大きな期待をして、実際に彼はリーダーシップを発揮しましたが、ではそれでアメリカがオバマ氏でなかった場合と比較して大きく変わったかといえば、教育とか医療とかに関してみてみれば、そんなに変わっていないな!というのが個人的な感想です。(かなりアバウトですが)

このアメリカの取る政策で直接ではないけど間接的に経済に関連してくるものが軍事戦略で、これは台湾有事からガザ地区ウクライナ対応を含みます。ウクライナ支援についてはそろそろ予算がつかなくなってきました。これはプーチン氏の粘り勝ちに近い状態で、このままずるずるいき結局ウクライナの領土の一部を事実上併合することに成功して終わりというエンディグが濃厚になりつつあります。


景気や経済について、2023年はインフレと高金利が大きな争点となり、特に欧米の経済は止まらないインフレに対し何度も金利引き上げで対抗しようとしたがなかなか思うようにいきませんでした。その欧米の金利高に対して日本は脱デフレのための低金利政策を維持しており、その金利差からドル高円安が一層進み、一ドル150円を超える水準まで進みました。現在はこれらの状況も落ち着きを見せているためアメリカは金利を下げ、同時に日本も春以降金利上昇が期待されることから2024年は今よりはドル安円高がすすむと考えられています。

ドル高円安はゆるやかであればマクロ経済の教科書によればGDP成長にはプラス材料になり、日本経済全体はすごく良いとも言えないが、トヨタ自動車や総合商社などのグローバル企業は海外で稼いだ分を円換算した時に金額が大きくなるため企業収益は”数字上”好転しています。ちなみにこれは円換算した数字だけの話なので、現場の人達はそれほど喜んではいないと思います。


赤字国債が多すぎるといわれている日本の国庫については、昨年2023年の税収ははじめて70兆円を超え、ここ数年間明らかに増加傾向にあります。一方で国債発行でふくれあがった歳出も100兆円を大きく超えており、赤字を減らして債務を増やそうとする財政再建派の財務省を中心としたグループと、景気対策のために大量の国債により景気対策をしたいリフレ派の間の論争はしばらく続きそうです。


参考までに、世界全体の経済予測はIMFの昨年10月のレポートでは以下のようにでています。

World Economic Outlook Projections from IMF “World Economic Outlook”, Oct 2023
(Real GDP growth, annual percent change)

2022 3.5%
2023 3.0%
2024 2.9%
https://www.imf.org/en/Publications/WEO/Issues/2023/10/10/world-economic-outlook-october-2023

実質GDPの成長率は2023年の予測値で3.0%なのでほぼ例年並みの水準です。インフレがひどく金利上昇から景気後退も予測されましたが数字だけ見るとかなり普通の水準です。

同レポートでは日本について

2022 1.0%
2023 2.0%
2024 1.0%

と非常にキリの良い数字になっていますが、近年の日本の数字と同じような水準となってます。2.0%は最近の数字と比較すると少し良くなっていますね。
世界も日本も2023年と比較すると若干低い値の予想が出ているようです。

全般的にまとめると地域紛争や天変地異が起こらなければ、もしくは起こったとしても小規模であれば経済全体としてみれば大きな変化はないような予測が出ています。個人的な解釈としては、現状の日本の生活については、よくも悪しくも相対的には安定しており変化は緩やかで、それゆえに新しい潮流には気づきにくい環境であるとも考えることができます。


(5)日本の経済や産業の今後は?

円高金利高、原油高が前半に予想されることで、春あたりに日銀による利上げがあると予想するアナリストが多くいます。その上昇金利幅とタイミングにより円高が進行すると一部のグローバル企業の決算は悪化します。ただし円高といっても現在の水準との比較での表現であり、1ドル100円など急激な進行を予想する人はあまり多くはありません(ただ為替の予想は結構外れる)。

日本の身近なところで気になるのは、慢性的な人材不足です。特に自分の場合新卒を中心とした人材紹介を行っていますが、人材の供給不足はずっと続いており売り手市場が恒常化しています。これは日本の人口動態を見てみればすぐに理解できることなのですが、生産年齢人口(15-64歳)は毎年減少している一方で、日本の経済規模自体は微増ながら大きくなっていることを考えれば必然的な帰結であり、今後10年ほどで50歳代の団塊の世代が第一線から離れていくことを考えればずっと続くことは容易に分かります。
このため多くの企業が特に若年労働力を取り合うことにつながり、会社もアルバイトもほとんど全ての業態で人手不足は深刻になっていきます。

数の不足は①オペレーション簡素化、②ロボットなど自動化(セルフ化)、③サービスの一部停止、④外国人を受け入れ、⑤子供をたくさんつくる、などの方法で解決するしかありません。現時点では①と②と③が徐々にすすんでいるところです。

雇用という意味では人材不足は失業率を下げるのでプラスです。世界規模でみれば失業率について日本ほど心配不要な国はシンガポールや香港などの高齢化が進む先進国で、いずれドイツやロシアなども同様になることが人口動態より予想されます。ドイツやシンガポールは海外からの労働力を積極的に受け入れており、彼らのやり方を学ぶことは意味がありますが、日本は島国で閉鎖的であり、また日本語という大変難しい言語があるため、英語が公用語の同じく島国のシンガポールの事例をそのまま真似ることは非現実的でしょう。(シンガポールは加えて人口が500万程度の非常にコンパクトな国でもある)

この”数”の不足は”質”にも影響があり、需要に対して少ない労働力を確保するために企業は労働条件を良くしないと人材が確保できません。それは賃金や労働環境の改善という良い面が多いのですが、一方で人材の競争が少なく、ある意味ゆるい環境で甘やかされるため、個人のスキルアップやレベルアップという点ではマイナスです。

インドや中国など人材が余るほどいて競争がある社会では、人々は切磋琢磨され適者生存の原理により強いものだけが残ります。それは進学時の入試に始まり就職活動や、社内での昇進競争までずっと続くので、人々は疲弊してストレスの多い社会ではありますが、一方で進化は速く、また勝ったものには十分な報酬も用意されています。
彼らの一部は自国から離れ欧米に行く人もおり、自国の呪縛から離れてきらびやかな生活を送っている人も存在します。

そういう中で日本という狭い社会で井の中の蛙状態になっている日本の人々は、いったん海外に出たときにはこの優秀な中国人やインド人がライバルになりますが、普段ぬるま湯のような社会にいると、なかなか対抗するのは難しいと思います。

企業の競争自体はグローバルの時代なので国籍には関係なく、良い製品やサービスを提供しているところが適者生存で残ります。その状況のもと日本国内で緩くしている会社が今後生き延びれるかということを考えた場合、先は暗いと言わざるを得ません。

その解決策は国策としても考えていかなければならないのですが、先進国になった現在の状態からインドや中国のような競争社会に戻ることは事実上不可能ですし、歴史を見てみればそういう循環があり国家の栄枯盛衰が繰り返される流れの中で、覇権は国や地域へと移っていきます。

個人としてのキャリアを考えるのであれば、もしグローバルで活躍したいのであれば早いうちのグローバルのビジネスの競争なり進歩の速さなりを体感しておくことが良いと思います。働き方や分野をどのように選ぶかは全くの個人の自由で良いと、個人的には思いますが、一方で身の回りがどのような法則で動いているかという実体を把握することはどこかで必要になってくると思います。

企業側の見方としては、よい人材を採用し維持するためには雇用条件や制度を変える必要に迫られています。具体的には基本給の増額、志望する配属部門にポジションを与える、昇進と昇給ペースを上げる、インセンティブの設計、海外赴任などの機会を提供する、というところが軒並み行う施策となりそうです。しかしながらどの企業も採用後の維持という点では必ずしもうまくいっていないと思う会社が多く、実際自分のところに個別に相談の連絡がたくさん来るのですが、それはどちらかというと期待値が高すぎることも原因かと思います。

そもそも日本の企業全体的に、会社にはずっといるものである、という昔の感覚から抜け切れていない人が多いのではないでしょうか。そして同じ部門の社員が退職した場合、その部署の上司なりメンバーの評価が下がってしまい、今度はそれを恐れるあまり、活動量が少なく辞めなさそうな人だけを採用するという悪循環に陥っているところも多いように見えます。本当に必要な人を採用せず、活発でないしがみつく人たちだけの組織が勝てる見込みは残念ですがありません。
また制度面では在籍期間が定年までを前提に昇給や昇進が設計されているため、若い人たちにとっては成長実感が感じにくい中で特別不満もないけどステップアップのために転職する例が大変多くなっています。

このような状態はそれほど簡単には変わりにくいと思いますので、今後も優秀な人材は外資系やインセンティブのあるスタートアップ、もしくは海外などへ流れていくでしょう。グローバル時代には国境を越えて才能を奪い合うゲームがすすんでいますが、それは日本も例外ではありません。


(6)スタートアップや技術動向について

2023年の技術の重要テーマの一つとして”ChatGPT”を挙げることができると思います。ChatGPTは”生成系AI”のツールの一つでオープンAI社というマイクロソフトに買収された企業が開発したものです。生成系AI(Generative AI)とは日常会話のように質問すると、あたかもエージェントのようにそれに答えてくれるものです。

生成系AIはChatGPTだけでなく、Google社のBardなど複数存在し、どれもある程度は無料で使えるようになっています。

例としてGoogle社の生成系AIである”Bard”無料版を使って以下の質問をしてみました。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー

Question:ChatGPTとは何ですか?初心者向けに100文字以内に分かりやすく説明してください。

Answer:ChatGPTは、膨大な量のテキストデータでトレーニングされた人工知能(AI)チャットボットです。テキストを生成し、翻訳し、さまざまな種類のクリエイティブなコンテンツを作成し、有益な方法で質問に答えることができます。

100文字以内で説明すると、次のようになります。

膨大な量のテキストデータでトレーニングされたAIチャットボット。テキストを生成し、翻訳し、クリエイティブなコンテンツを作成し、質問に答えられる。

この説明では、ChatGPTの基本的な特徴を簡潔にまとめています。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

だいたい日常生活で知りたいようなことは、こちらでほぼ回答が出てきます。この質問だけだとこれまでのGoogle検索とほぼ変わらないのですが、プログラミングのコードについて質問したり、画像を生成してもらったり、より具体的に相談したりすることもでき、例えば以下のようなことも聞くことができます。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

Question:家族4人で春休みに海外旅行を検討中です。5日程度で治安が良く安全で、観光施設が沢山あるきれいな国の候補先を3か国教えてください。総額予算100万円で行きたいと思います。

*質問は具体的な回答が出るまで複数回聞いています。

 


Answer:

シンガポール

治安が良く、安全な国です。
シンガポールの観光名所の画像新しいウィンドウで開く
travel.rakuten.co.jp
シンガポールの観光名所
多民族国家で、さまざまな文化や食を楽しむことができます。
マリーナベイ・サンズ、ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ、シンガポール動物園など、観光スポットが充実しています。
5日間の旅行で、これらの観光スポットを効率よく回ることができます。
予算総額100万円で、家族4人で快適な旅行を楽しむことができます。

台湾

治安が良く、安全な国です。
台湾の観光名所の画像新しいウィンドウで開く
tabichannel.com
台湾の観光名所
自然豊かな景色と、活気あふれる都市の両方を楽しむことができます。
九份日月潭台北101など、観光スポットが充実しています。
5日間の旅行で、これらの観光スポットをじっくりと楽しむことができます。
予算総額100万円で、家族4人でリーズナブルな旅行を楽しむことができます。

タイ

治安が良く、安全な国です。
タイの観光名所の画像新しいウィンドウで開く
www.tabikobo.com
タイの観光名所
美しいビーチと、豊かな自然を楽しむことができます。
バンコクプーケットチェンマイなど、観光スポットが充実しています。
5日間の旅行で、これらの観光スポットをバランスよく楽しむことができます。
予算総額100万円で、家族4人でお手頃な旅行を楽しむことができます。
これらの国は、いずれも治安が良く、安全で、観光施設が沢山あるきれいな国です。ご家族の興味や予算に合わせて、最適な旅行先をお選びください。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー

こんなかんじです。

生成系AIはChatGPTが有名ですが、私はGoogle社のBardを使っています。特に理由はないのですがChatGPTは使用回数が制限されていたり、新しい情報が出てこなかったりするのでBardを使用していますが、検索結果は日常生活の質問についてはどちらも変わらないレベルなので好きなほうを使えばよいと思います。

この生成系AIについては、ネット上にもいろいろな記事や動画があるので、是非一度気合いを入れて学んでみてください。一般的には私の周りを見ても技術や情報について詳しい人ほどこれらのツールの凄さを認識しており、ChatGPTの有料版(月20ドル)を払って使っている人は沢山います。

私の使い方は情報の収集、資料の作成(特にグラフの作成など)、日本語の英訳、自分が作成した文章のチェック、あいさつ文など定型文章の作成と日常で出てきた細々として質問などに使っていますが、ほぼ使わない日はない状況です。有料版は基本的に一般のネットユーザーの使い方を知りたいので使っておらず(これは他のツールも同様)、それでも特に不便は感じていません。

この生成系AIを使いこなすことは日常生活の向上に役に立つと思いますが、使うほうのリテラシーには大きな差があり、ちゃんとした言葉で求める回答がでるような聞き方をする必要があります。ここはロジカルに正しい聞き方が必要になってきますので、ちゃんと意味を理解して話す習慣を学習することが求められます。

 

少しここから離れて世界の技術全般やスタートアップに話を移すと、2023年はスタートアップの投資は低調なままでした。数年前にはスタートアップ投資バブルがあり、どんどん投資して会社もどんどん使って大きくなればOK!という風潮は現在は全くありません。
ただし低調と言いつつも個人的な感想としては、それ以前のバブル状態から正常に戻ったという解釈をしており、むしろバブルが長く続いて壊れたときのショックが経済全体に大きくなるよりは現在のように少し冷静さを取り戻しながら全体として成長していくことは悪くないことだと考えています。

ちなみにCBInsightのランキングではユニコーンについては以下のランキングになっています。

https://www.cbinsights.com/research-unicorn-companies

*as of 2024/1/10


Company    Valuation ($B)    Date Joined    Country

(1)ByteDance    $225.00     2017/4/7    China
(2)SpaceX    $150.00     2012/12/1    United States
(3)SHEIN    $66.00     2018/7/3    Singapore
(4)Stripe    $50.00     2014/1/23    United States
(5)Databricks    $43.00     2019/2/5    United States
(6)Revolut    $33.00     2018/4/26    United Kingdom
(7)Epic Games    $31.50     2018/10/26    United States
(8)Fanatics    $31.00     2012/6/6    United States
(9)OpenAI    $29.00     2019/7/22    United States
(10)Canva    $25.40     2018/1/8    Australia
(11)Chime    $25.00     2019/3/5    United States
(12)Xiaohongshu    $20.00     2016/3/31    China
(13)J&T Express    $20.00     2021/4/7    Indonesia
(14)Miro    $17.50     2022/1/5    United States
(15)Yuanfudao    $15.50     2017/5/31    China
(16)DJI    $15.00     2015/1/23    China
(17)Discord    $15.00     2018/4/20    United States
(18)Gopuff    $15.00     2020/10/8    United States
(19)Yuanqi Forest    $15.00     2020/3/1    China
(20)Ripple    $15.00     2019/12/20    United States
(21)Blockchain.com    $14.00     2021/2/17    United Kingdom
(22)Plaid    $13.50     2018/12/11    United States
(23)OpenSea    $13.30     2021/7/20    United States
(24)Celonis    $13.00     2018/6/26    Germany
(25)Grammarly    $13.00     2019/10/10    United States
(26)Devoted Health    $12.60     2018/10/16    United States
(27)Faire    $12.59     2019/10/30    United States
(28)Brex    $12.30     2018/10/5    United States
(29)JUUL Labs    $12.00     2017/12/20    United States
(30)BITMAIN    $12.00     2018/7/6    China


国別でみると(全部で1220社)

(1)アメリカ 653社
(2)中国 172社
(3)インド 71社
(4)UK 52社
(5)ドイツ 30社
(6)フランス 25社
(7)イスラエル 23社
(8)カナダ 21社
(9)シンガポール 16社
(9)ブラジル 16社
(11)韓国 14社


企業数はアメリカインドが昨年より増えていますが、他の国はあまり変わらないですね。
*CBInsight社の昨年のランキング情報が手元にないため直接比較できません。

 


日本企業についてはユニコーンに入っているのは7社で、顔ぶれは昨年とあまり変わっていません。

(1)Preferred Networks    $2.00     2018/5/17    Japan
(2)SmartNews    $2.00     2019/8/5    Japan
(3)SmartHR    $1.60     2021/6/8    Japan
(4)Spiber    $1.22     2021/9/8    Japan
(5)Go    $1.00     2023/5/24    Japan
(6)Playco    $1.00     2020/9/21    Japan
(7)Opn    $1.00     2022/5/9    Japan

 

日系企業はここだけを見ると大した変化は見て取れませんが、国内のスタートアップの活動自体は毎年どんどん活発になっていると思います。ここは大学初ベンチャーとか大きなインキュベーション施設が沢山で来たりしているので、今後に期待しましょう。

 

(7)2024年はここに注目してます

たくさん、つらつらと書いてきたので最後に少しだけまとめようと思います。
個人的に注目しているテーマは以下のものです。

 

・ガザ紛争はどうなるか?最悪は世界的な「キリスト教徒vsイスラム教徒」の気運
・中国の経済と社会の今後 不動産バブルにどう対処するか?
・台湾の総選挙 現状政権が維持できるか?
アメリカの大統領選挙 再びトランプ氏?
・もしトランプ氏が大統領になった時の政策の内容は?
・スタートアップ投資はどのようになるのか?
・日本国内の人材不足に企業はどう対応するのか?
・日本の政局運営はこのまま混迷を続けるのか?


今回もまとまりなく長くなってしまいましたが、最後までお読みいただいた方には感謝したいと思います。感想などいただけると大変うれしいです!

本年もどうぞよろしくお願いいたします。