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将来有望な分野や業界は?ー「食」に関する産業ー

個人のキャリアを考える人から「将来はどこの業界が良いですか?」という質問をよく受けるのですが、その回答の一つである『「食」に関する産業』について今回はお話しします。

<Index>
◆人口動態から見た市場
◆日本の食産業は競争力がある
◆「垂直農場」という考え方
イノベーションとは?


◆人口動態から見た市場

将来の業界や産業については私自身、未来が見えるわけではありませんが、日常生活を普通に観察してみてわかることもあります。
例えば2022年現在、世界には約80億人が地球上に存在しますが、いろいろな国際機関の試算によると2050年には90億から100億人とかになると予測されています。

国際連合報告センターより)
「世界人口の増大が鈍化、2050年に97億人に達した後、 2100年頃に110億人で頭打ちか」
https://www.unic.or.jp/news_press/info/33789/ 


そうなると当然のことながら、人間が増えるわけですから原始時代の生活に戻らない限り、それ相応の「衣・食・住」が必要になります。このうち特に「食」については人間の生存にとって必要なものであるので、これから増えていく人口の分を、追加で生産する必要があります。つまりマクロ的な経済的視点では、食料品に関する業界規模は80億から90-100億に増えていくわけです。

 

◆日本の食産業は競争力がある
食料が必要になるので、食料品メーカーは全体として当然多くの売り上げを計上することになります。その中ので勝つ会社が日清食品であるか味の素であるかは中長期では予測できませんが、少なくともどこかの企業は(海外かもしれない)、大きく伸びることが予想されます。
日本の食については一般的に世界的にも味や品質という点で高評価を受けています。

例えばJETROの調査による以下のレポートがあります。
日本食品に対する海外消費者アンケート調査-6都市比較編-モスクワ・ホーチミンジャカルタバンコクサンパウロ・ドバイ」
https://www.jetro.go.jp/ext_images/jfile/report/07001590/compare_6cities_rev.pdf

(本文より抜粋)
・好きな外国料理
日本料理が1位で突出。2位にイタリア料理、3位に中国料理と続く。日本料理は特にバンコクジャカルタで人気。
・日本料理が好きな理由
 主な理由は「味の良さ」「健康に配慮」「洗練されている・高級感」。
・日本料理のイメージ
 「美味しい」「健康に良い」「おしゃれ」「安全」など総じてポジティブなイメージが強い一方、4割程度の回答者が「価格が高い」と回答。


日本の食品メーカーである、明治、味の素、日清食品キッコーマン、ヤクルトなどは世界でシェアもブランドも確立しており、今後も様々な新製品を開発していくことが望まれています。
メーカー以外でも吉野家松屋すき屋などの牛丼チェーン店も東南アジアを中心に店舗を増やしていますし、日系のコンビニが増えていくと、そこで日本のお菓子や飲料なども当然売り上げが増えるので市場の拡大が現実的に見えてきます。

日本企業にとって有利な点は、東南アジアに位置する日本食はいわゆる華僑がいて中華料理が普及しているエリアでは競争優位性があります。そして東南アジアには人口が集中しており、14億の中国はもちろんのこと、人口4位のインドネシアが2.7億、ベトナムやフィリピンが約1億、さらに南アジアまで足を延ばせばインドがあり、ここは若干味のベースが異なるものの13億の人口がいます。

アジア地域には世界の人口の約6割がいて、その食の嗜好性が日本と近いのであれば、それは大変有利な条件となりますので、欧米のシェアを仮に取れなかったとしても十分なマーケットのサイズは確保できます。

 

◆「垂直農場」という考え方

一方食料品が現在の方法や技術だけで90億分作られるためには、現在の農業のやり方では農地も足りなくなったり、また生産も追いつかない可能性があり、新しい農地開発や農業の方法が必要になります。つまり何らかのイノベーションを起こさないといけません。
イノベーションは何も科学的な品種改良や遺伝子組み換えなどばかりではなく、農業のやり方を変える、流通経路で効率化する、もしくは調理法で長期保存の方法を作るなどいろいろなやり方があり、必ずしも理系の技術者によるものはありません。
例えば現時点でも「垂直農場」というものがあり、都市のど真ん中で野菜や果物を吊り下げる形で栽培する方法では、面積当たりの収穫量も多く、また水を流したり浸したりするのではなく、シャワーのように噴射することで少量の水分で効率的に栽培することが実現します。

シンガポールの空中農園(国連大学ウェブマガジンより)
https://ourworld.unu.edu/jp/farming-in-the-sky-in-singapore


イノベーションとは?

このように新しいニーズがあるところには、イノベーションが生まれる機会がり、それは何も技術だけで解決するわけでもありません。
「本当に食料が足りなくなると困る!」という状況下で誰かが何か新しいことを発明しないといけない時に新しい知恵がうまれ実現する余地がたくさんあります。

そのように考えれば、将来不安だからそれを避けて生きるのではなく、それを積極的に解決しようと心がけるところに新しい挑戦とイノベーションが生まれ、それで人類は進歩していくのだと思います。

この垂直農場という考え方には、何も植物学や生物学の学位がなくてもできる発想です。イノベーションというと難しいと思いがちですが、身の回りにもたくさん”普通の人の知恵”があります。
例えば身近で使っている洗濯機の中にある「糸くず取りネット」は主婦の方の発明で、彼女はそれにより特許を取っています。

別の例では水道の排水管で使う「S字トラップ」は、洗面台の下の配管がS字になったものですが、これは排水をS字のところで少量ためて排水管からの物の侵入や臭いを防ぐ効果があります。

このような例を見れば、普段からちょっとしたニーズを見つけ解決しようと思うだけで、いろいろな可能性があることが分かると思います。




今回は「食」というテーマで業界を見てきましたが、様々な未来の可能性を見つけることであまり動いていない業界も突然違った世界に代わる可能性があるので、自由に想像してみることも大切かなと思います。