コロナで身近に迫る危機(その2)
<その2(もくじ)>
コロナで身近に迫る危機(その1)
コロナ禍で明らかになってきた危機について2回に分けて少しお話します。各テーマについては海外の関連する記事のリンクも張りましたのであわせてご覧ください。
<その1>
(1)運動不足が危機的
(2)人間関係の希薄化と孤立
(3)域内経済格差の拡大
<その2>
(4)国際化の中での孤立
(5)企業の合併、買収など再編
(6)国家または企業による個人情報の独占
(7)企業や国家によるメディア私物化
(1)運動不足が危機的
自粛生活は生物としての人類を退化させています!
iPhone、AppleWatch、Fitbitなどを持っている方は自分の万歩計を見てみてください。コロナでの自粛の前後で歩く距離が大きく変わっていると思います。
ちなみに私個人も今年3月くらいから目に見えて平均の歩く歩数が減っています。これでも8000歩を確保するためにランニングしたり散歩しているのでなんとか8000歩になっていましたが10月はオンラインの仕事激増のため、遂に平均できってしまいました(涙)。
別に食事もコントロールしているから肥満とか大丈夫、と思っている方、ちょっとふさぎ込んだり、鬱気味になっていませんか?鬱までいかなくともどうもやる気が起こらない、とか人と会うのがおっくうだ、とかパフォーマンスが上がっていないという声を自分の周囲では良く聞きます。
<解決案>
是非明日から昼間太陽が出ている時に外に出て散歩しましょう。太陽が出ている時の昼間に、というところが大切です。我々は野山を駆け巡るようにつくられており、それは急には変わりません。生物としての退化は頭脳労働にも影響しますので一日8000歩(約1時間15分くらい)を目安に運動してください。
<海外の記事(参考)>
-WHO(World Health Organization)
https://www.who.int/news-room/campaigns/connecting-the-world-to-combat-coronavirus/healthyathome/healthyathome---physical-activity
-Michigan Medicine
https://medicine.umich.edu/dept/psychiatry/michigan-psychiatry-resources-covid-19/your-lifestyle/importance-physical-activity-exercise-during-covid-19-pandemic
-US National library of medicine
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7302086/
(2)人間関係の希薄化と孤立
オフィスに行かなくなり、人と接する時間が減っている人も多いのではないかと思います。オンラインの会議は効率的でオフラインの会議よりも短くトピックからも外れた話になりにくいため、その点では非常によいです。一方で雑談も減り人間的な会話も減っています。また他部署の方とはほとんど会わなくなっているところも多いと思います。これまでであれば別部署でも隣のグループなら挨拶したり、時々食事に行ったりということが自然に行われていました。しかしこれがなくなると隣のグループが何をやっているか全くわからなくなったり、または自分は担当となる仕事をするだけの「仕事マシーン」みたいに思えてくることもあるのではないでしょうか。
<解決案>
社内でカジュアルな組織横断的オフ会をしましょう。仕事の話は禁止にして普通の飲み会かお茶会。またはちょっとしたテーマで議論したりするオンラインの会に積極的に参加しましょう。最初は違和感があるかもしれませんが、オンラインでの参加には今から慣れておくと良い思います。
または自分からオンラインの会を開いてみてはどうでしょう?テーマの準備など大変かもしれませんが勉強になるし、集客するときにはSNSなどをつかったネットマーケティングを学べると思います。失敗したところで大して失う物もないので周囲の友達へのよびかけからやってみてはどうでしょうか?
<海外の記事(参考)>
-CNN
https://edition.cnn.com/2020/08/25/health/pandemic-effect-on-relationships-wellness/index.html
-BBC
https://www.bbc.com/future/article/20200601-how-is-covid-19-is-affecting-relationships
(3)域内経済格差の拡大
残念ながらコロナによりどうしても盛り上がることのできない業界があります。小売、飲食、旅行などがそうですが地域の小規模店舗も少なからず打撃を受けています。一方でEC、オンラインサービス、ネットでの販売力があるピザなど飲食ですが追い風です。UberEatsも今回で存在を一気に高めました。
これらの産業が集積されている都会ではまた悪い影響は小さいのですが、一般に地方に行けば行くほど観光への依存が大きいため経済への影響は大きくなります。
産業ごと、地域ごとなど一つの国の中でも差が大きくなはじめ、悪い事実として良くなる人よりも悪くなる人のほうが圧倒的に数が多いということがあげられます。
<解決策>
個人に関してはITスキルやネットでの活動量を増やすことをお勧めしたいです。またSNSでは「実名」でしっかり自分の存在を明らかにし、自分の名前で行動できるようにすることをお勧めしています。
ビジネスで使うSNSとしては国内ならfacebook、海外であればLinkedinがシェアを持っています。個人でイベントなどを行う場合はtwitterはリツイートでどんどん拡散するので強力な武器になります。また独自のコンテンツを持っている、もしくは一芸に秀でているのであればyoutubeで配信することもあるかもしれません。
何も全員がyoutuberになる必要はありませんが、一部のファンにでもコンテンツを伝えることができればそれが思いのほか違った方向での展開も今後あるかもしれません。
それと地方へのオフィス移転などもよい動きだと思います。パソナが淡路島にオフィスを移転しましたが、会社でなくとも東京で働く人が地方に移り住み、リモートで働くということが増えることは良いと思います。
<海外の記事(参考)>
-Forbes
https://www.forbes.com/sites/bernardmarr/2020/04/17/8-job-skills-to-succeed-in-a-post-coronavirus-world/
-McKinsey
https://www.mckinsey.com/business-functions/mckinsey-accelerate/our-insights/accelerate-blog/thriving-after-covid-19-what-skills-do-employees-need#
前半はここまで。次回の後半では残りの4つの少し国際的な視点でお話したいと思います。
to be continued
大学卒業後30年たって気づいたギャップと発見
1988年学部卒、その後、数学科ドクターに行き1993年に外資系コンサルに就職しました。就職後独立したり連続起業家になったりして世界も周りいろいろなものを見てきましたが、学生時代に思っていたことと大きなギャップがあったので今回はそれらをまとめてみました。
特に大学生など若い人の参考になれば幸いです。(*箇条書きでまとまっておらずスミマセン)
・自分は自然科学が好きで向いていて、文系就職してもこの傾向は変わらない。サイエンスが生かせる分野は結構たくさんありコンサル会社はその一つでよかった。(今は大学院で経済や経営を教えているが、実は今でも数学と物理のほうが得意で心地よい。)
・コンサルでうまくいった理由は自然科学の態度で観察する力。これは完全に数学と物理の研究の副産物。
・言語表現は社会人になってからのびた。とくに論理的に表現する能力は、こなした時間と共に指数関数的に進歩した。
・記憶力や学習方法にはテクニックがある。動機付けとプロセスの工夫をすると改善余地は大きく誰にでもかなり伸びしろがある。
・個人の持つ可能性は想像以上に大きい。昔は将来の可能性に対して否定的だったが、自分の思いもしない良いシナリオがたくさんあることが分かった。多くの人、特に日本人は謙虚になりすぎて自分の可能性を自ら否定しているふしがある。これはもったいないので是非『勘違い』して高みを目指してほしい。
・世の中の変化は結構激しい。自分も周囲もどんどん変わっていくのでほぼ予測不可能。
・価値観や世界観は結局自分の見たものだけで形成される。これらは客観性を求めるものではなく人と比べるものでもない。
・客観的と思われる科学の常識も新しい発見で時に180度変化する。例えばマーガリンはバターより健康的とか、静的なストレッチはウォームアップに良いなど。
・体力はトレーニングをすることで意外と落ちていかない。特に最大筋力、持久力はともに最小限のトレーニングでもそこそこ維持できる。
(ダメになるものもあり、動体視力、瞬発力、反転力、バランスなどはなかなか維持は難しく感じる)
・飲食と睡眠が人生ではかなり重要。特に心身の健康維持は頭脳労働者にとっても大切。
・上手に年齢を経ないと自分の変化に気づかない。それは10代から20代への変化でも同じ。自覚はなくとも年齢が上がり立場も変わるので他人から見えている自分の姿は変わる。
・年長者もそれほど凄い人ばかりではない。年長者への敬いは凄く美しい態度でこれには100%賛成であるが、無条件に彼らの言うことを聞いたり真似る必要はない。
・世界は広く、知識も無限にある。あのニュートンが自分はほんの一部しか分からないと言っていたが、本当にその通りだ。(少年老い易く学成り難し、孔子)
・年齢と共に賢くなったり悟ることがある。(論語より「子曰く、吾十有五にして学に志す、三十にして立つ、四十にして惑わず、、、」)
・歴史から学ぶことはたくさんある。人類は同じような過ちを繰り返しているが、それは大変残念なことである。
・学問の基本は「読み、書き、そろばん」の原則は今でもなりたつ。分野で言うなら国語と算数は両方大切で、文系だからとか理系だからどちらかはダメという言い訳はよくない。
・年齢が上になるほど学ぶことの重要性を強く感じる。若いときにしっかりやっておいたほうがよいことはずばり”英語の勉強”!自分は”ちゃんと”やらなかったので今でも不完全で苦労している。
・日本は世界の中で小さいがプレゼンスもあり特徴のある国である。そして日本人は海外に出ればいろいろな点で特殊な習慣や価値観をもつ人々である。
・人生の成功確率は、情報量とネットワークがあると格段に上がる。したがって狭い世界にこもっていればどんどん確率は下がっていく。
・ニュースや本、メディア、教育、思想、科学などどれも完全なものではない。時にそこには利害関係者の恣意がはいっており、それに気づかないと洗脳状態になる。
「論理(ロジック)」について学びなおす~その6(相関と因果)「バスケットをやると身長が伸びる?」~
(番外の補講)「論理(ロジック)」について学びなおす~その5(数字編)「PCR陽性はどれくらい危ない?」
前の記事の番外の補講です。
前回のPCR検査の記事が思いのほか反応があったので、現実に近いと思われる数字を使いより具体的なケーススタディとしたいと思います。
*予めお断りしておきますがPCRやコロナ対策の是非を主張するための試算ではありません。
あくまで数字を使いながら実体把握し推論を進めるケーススタディとして解説します。
前回の記事では以下の数字を想定して計算しました。
「論理(ロジック)」について学びなおす~その5(数字編)「PCR陽性はどれくらい危ない?」
==================================
(以下計算のための仮定)
このPCR検査は”本物の”コロナ患者が受けると99%の割合で陽性が出るが1%は陰性(「偽陰性」という)になる。一方患者でない人が受けても10%陽性が出て(「偽陽性」という)、90%は陰性となる。*実際確実に検出しようとするとそうなるらしい。
さてコロナの患者の割合は全人口の0.1%と分かっているとすると、陽性と判断された人が本当にコロナにかかっている確率はいくらか?
==================================
この計算結果は上記の前提だと、実際に感染者である確率(陽性的中率)は約1%でした。
さてこの時は計算の練習として適当に数字をおきましたが、本物の数字を入れたらどうなるの?と思ったので、ネットで正しそうに思われる数字を調べたうえで、それを使って試算しなおします。
(参考)
COVID-19でのPCR検査体制 | 日本医師会 COVID-19有識者会議
【COVID-19 に関する一般的な質問に対する現時点での文献的考察】 v1.2 (2020/3/23)
感染症・結核学術部会
https://www.jrs.or.jp/uploads/uploads/files/information/20200325v1.220200323.pdf
上記などのネットの記事をもとに以下の仮定を置いてパターン分けして試算しました。
<仮定>
(1)感度(感染者が検査で陽性になる確率)は70%で固定 *ここは多分これくらい
(2)特異度(非感染者が検査で陰性になる確率)は以下で試算(90%/99%/99.9%/99.99%)
(3)事前確率(全人口に占める感染者の割合)は以下で試算(10%/1%/0.1%/0.01%)
そこで作ったのが以下の表になります。
事前確率を一定とすると、特異度が高い(=陰性の人が検査で確実に陰性になる)と、「陽性的中率」は上がる。言い換えると検査で陰性の人がちゃんと陰性反応と出るほど、嘘の陽性(偽陽性)がでにくくなる。*以下の図の青の線
特異度を一定とすると、事前確率が上がるほど「陽性的中率」は上がる。言い換えると世の中の人の感染者の割合が高いほど、嘘の陽性(偽陽性)がでにくくなる。*以下の図の緑の線
以上は定性的な記述をしていますが、ここからは数字を使ってもう少し実態を記述することにします。
★ここから少し数学を使った話になります★
独立変数(=お互いに独立して関係のない変数)は3つで、それぞれx、y、zとおきます。
(1)感度(感染者が検査で陽性になる確率)(70%)(=x)
(2)特異度(非感染者が検査で陰性になる確率)(90%-99.99%)(=y)
(3)事前確率(全人口に占める感染者の割合)(0.01%-10%)(=z)
なんとなく「独立変数は3つ」と言いましたが、この3変数がお互いに全く影響を与えない勝手な値をとれることがまず第一のポイントです。
「感染者が陽性になる確率が70%の場合、非感染者が陰性になる確率は30%じゃない?」
違います。
これは「AならばBである」の命題が”裏”である「AでないならばBでない」と同じ形です。
A(=「感染している」)/Aでない(=「感染していない」)
B(=「陽性になる確率は30%」)/Bでない(=「陽性にならない確率は70%」)
命題の裏は元の命題が真でも、必ずしも真とはならないことは以前の記事でも述べていますので復習しましょう。
(1)の感度と(2)の特異度は独立です。(1)は感染者についてのみ述べています。非感染者については全く何の制約もありません。同様に(2)は非感染者についてのみ述べており感染者にはまったく関わりはありません。
(3)については検査とは全く関係ない情報で、全人口の中でどれくらいの人が感染しているかだけを述べています。
その中から感染者を選んできて検査した場合が(1)で、非感染者を選んで検査した場合が(2)です。なのでこの3つは全てお互いに影響しない独立した値(数字)を取ることができます。
(陽性的中率)=(z*x)/{z*x+(1-z)(1-y)} ・・・(4)
今回の試算ではx=0.7で固定しているので、ここから先はxを変数とみることはやめにして、定数0.7という決まった数字であると考えてください。
そうなると(4)式をzで整理すると
==>a-b/(z+c) (a,b,c>0の定数)
の形になるのでzが大きくなると陽性的中率が上がることが分かります。
同様に(4)式をyで整理すると
==>d/(-y+e) (d,e>0の定数)
の形となるのでyが大きくなると陽性的中率は上がります。
(★ここから大事★)
今回主張したいのはロジックとか計算方法についてではなく、ここでの数字を用いた試算結果の解釈です。
2つの変数を動かしてシミュレーションした結果、陽性的中率は最低の0.07%から最大の99.9%までかなりの幅があることです。
(最低の数字)事前確率0.01%、特異度90%の時、陽性的中率=0.07%
(最高の数字)事前確率10%、特異度99.99%の時、陽性的中率=99.9%
*数字は表の物から四捨五入
この2つの数字がどうなるかによってPCR検査の解釈は大きく変わり当然施策も変わってきます。
もしも感染者で偽陰性(感染者が検査で陰性)の検査結果が多いなら、安心して外に出る感染者が増えるとより感染者が増えるので外出制限すべきです。
また非感染者で偽陽性(非感染者が検査で陽性)の検査結果が多いなら、再検査の頻度を上げる、検査の精度を上げるなどに取り組まないとPCR検査を受けることで行動制限を強いられるスポーツ選手などが増えてきます。
いずれのケースでも数字の絶対数と割合を考えたうえで判断すべきであり、実態はこの数字によって表されます。
実際に今回の例では「事前確率」が最も確定しにくい数字です。「特異度」は対象が検査を受けた人で数も限定的なので検査の結果を追えば精緻化できます。一方で「事前確率」は国民全体のうちの感染者割合ですからランダムに抽出したサンプルから求めないといけない数字ですが、健康で一見問題ない人は検査に来ないので母集団に入ることが少なくなります。こうなると感染が疑わしい人たちだけのサンプルで感染者率を割り出すと当然数字は高くなります。
これまで見てきたように「事前確率」が高くなると「陽性的中率」も高くなるので、PCRの検査結果を過大評価することになります。
少しややこしい話が多かったですがいかがでしょうか?
単純化して偽陽性や偽陰性が多いからダメだとか少ないからどうだとかよりも具体的に微妙なバランスが見えたのではないでしょうか。
少し具体的な数字の感覚をもって両極端ではない世界を考える習慣を持つと世界の見え方が変わるのではないかと思います。
「論理(ロジック)」について学びなおす~その5(数字編)「PCR陽性はどれくらい危ない?」
(*この部分が「条件付確率」の計算でベイズの定理そのもの)