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2020年 世界はどう動く?(新年の雑感)

2020年 世界はどう動く?(新年の雑感)
***”超”長文注意***(約10,000字)*ヒマなときにどうぞ!
*本文は信頼できる情報をもとに書いていますが、記憶のみから作成しているので正確性や内容の判断はご自身でお願いいたします。
 
新年の恒例となった2020年の見通しについて今年も簡単にまとめてみようと思います。
 
<目次>
1)2019年から2020年にかけて(総論)
2)米中貿易戦争は何をもたらしたか?
3)火種となった朝鮮半島、日韓関係の悪化
4)混迷するEUの行方は?そしてその時ロシアは?
5)火種の中東の今後は?
6)日本はどうする?
 
 
<本編>
1)2019年から2020年にかけて(総論)
 
総論として2019年は局地戦以外は”暴力的な”戦争はなかったものの、米中貿易戦争などの影響で経済面で若干後退した1年でした。
 
経済的に大きなインパクトだったのは米中の貿易戦争が続いたことです。世界GDPの1番と2番の国の間の貿易が滞ると世界の流通量が減り、先進国では輸出が多いドイツや韓国と、天然資源で外貨を稼いでいる発展途上国への影響が大きくなりました。
しかし雪解けも見え始め2019年12月15日に発動予定だったアメリカの対中追加関税の見送りは、もう双方で喧嘩疲れしこれを続けても誰も得しないということを今さらながら痛感してのことです。しかし米中の経済戦争はまだ始まったばかりであり、イランでの米国の空爆や台湾総裁選挙の結果などを踏まえると先々には不安な要素がたくさんあります。
 
数字で見るとIMF2019年10月15日公表の「世界経済見通し」によれば、世界経済の実質GDP成長率は2019年に3.0%、2020年に3.4%になると予想しています。2019年の3.0%という数値は、リーマンショック以来の低水準で景気失速をそのまま表していますが、2020年には3.4%に戻るとも言われており、これまでの順調さから見ると見劣りする部分があるのは確かですが景気サイクルの循環で見れば許容範囲と言えると思います。
 
株や債券の動きは堅調で、米国株はダウ平均、 S&P500ともに最高値を更新しました。GDPの成長率が前年ほど良くないことを考えると若干過熱気味ではありますが、アメリカも中国も資本の流動性が大切なのでこういう状態を望んでいるのかもしれません。それとあまり日本ではニュースになりにくいのですが欧州でもストックス欧州600指数は418.53ポイントまで上昇し、2015年4月付けた過去最高値を更新しています。
 
各国の国債についてはレンジ内での動きが多く、ブラジル、トルコ、ロシアなどの中央銀行が利下げを実施したことなどから無難な動きをしていました。そのような状況の中、懸念となる新興国国債への評価は中立のままですが米国との金利差縮小は国やマクロ環境の突然の変化により、1997年に見られたような資本の引き上げを心配する声はなくなっていません。あの時のような極端なことは短期では起こりにくいですが、各国の経常収支や域内の政治活動により国や地域ごとの選別が始まるかもしれません。
 
新興国の経済に関しては2018年の世界経済がトランプ大統領によるお手盛り大減税もあり好調でしたので、そこから見ると一歩後退というところでした。中国、インドやインドネシアといった人口の多い国が全体的に豊かになればその絶対値の成長分は大きいためそこに輸出入する先進国も大きく恩恵を受けますが、問題は新興国の経済成長が先進国からの投資マネーと技術輸出による無理やりに近い状態で成り立っており、また輸出先である先進国の景気に大きく左右されるため、ひとたびその流れが逆流し始めるとまさに1997年の通貨危機と同じことが再発する可能性が高まります。
 
物価に大きく影響を与える原油の価格を見てみると、現状の1バレル60ドル前後の価格で石油輸出国機構OPEC)加盟国全体の経常収支は黒字を確保できるのですが、原油価格が10ドル余り下落するだけでOPEC全体の経常収支は赤字となり、あっという間に景気は厳しい状況に陥ります。アフリカや中東の国の多くは資源価格に国の経済全体が依存しているので、原油をはじめとする資源価格の急落は経済のみならず国内の政治にも大きな影響を及ぼします。
ちなみに最近ではアメリカでのシェールオイルやガスの産出量がコンスタントになっているため価格は一時期20ドル台まで下がり、また以前にほどは中東の紛争で乱高下ということは少なくなっています。
 
 
 
2)米中貿易戦争は何をもたらしたか?
 
アメリカの現在と今後
中国との世界覇権争いが明らかになったアメリカですが、経済的にはGDP成長率が前年度比2.4%程度になる見込みで前年の2.9成長と比べて鈍化しています。失業率は低いままで推移し経済的には絶好調ではないものの受け入れられる範囲であると思いますが、最近は少しでも経済予想がはずれた場合おおげさに取り上げられる傾向があるので「景気失速」のようなトーンで書かれている記事は増えています。インフレ率の推移も比較的安定で、心配は過去から現在よりは、現在から将来に移っていると思います。
トランプ大統領があまりにも突然過激な発言をtwitterでつぶやくので相場も神経質になっていますが、さすがに就任4年目ともなれば「オオカミが来たぞ!」に世の中が慣れてきているかもしれません。
 
トランプ大統領に振り回されているアメリカ(というか世界中)ですが、経済に関しては減税やFRBへの低金利へのプレッシャーにより人為的とは言われながらもそれなりに景気と株価を支えています。気になるところは財政、金融政策と景気のバランスで、大統領選挙の再選のために株価と景気、失業率などは選挙までなんとしてでもキープしようとしているのですが、為替政策や金融政策にいては一貫性が見られずその都度場当たり的にやっている印象があり中長期で見れば財政赤字の拡大、アメリカ国債の信用不安、国際社会でのプレゼンスの減少など心配する材料には事欠かない状況です。
 
今年11月の大統領総選挙は、現時点ではトランプ優勢と言われていますが、今後の世界の混迷度合いによっては変わる可能性もあります。民主党対抗馬は高齢の元副大統領のジョー・バイデン氏または経済学の教授であるエリザベス・ウォーレン氏に加えブルーンバーグ氏の名前も挙がっています。
 
◆一方の中国は?
中国の経済成長の陰りは誰の目にも明らかになってきました。中国政府公表の実質GDPの成長率については2017年6.8%、2018年6.6%と比べて2019年は米中の貿易戦争の影響もあり死守したい6%を切るという見方が出ています。そもそも中国政府公表のGDPの数字をそのまま正しいと考えている人は現在では少なくなり実際のところは分からないのですが、国内の需要の伸びが鈍化して自動車や物が売れていないことは明らかであり、無理やり数字作りのための公共投資もそろそろ息切れ感が否めません。各国政府の公表する経済数字がどれだけ正しいかは中国に限らずどこの国でも不明ですが、中国汽車工業協会(CAAM)の発表する自動車販売台数という比較的信用できるデータで見れば、前年対比の購買の大幅減少は明らかです。
 
懸念の一つである不良資産の整理もどれだけ進んでいるかも正直分かりません。アメリカと同様金融緩和と財政投資による流動性の確保と、財務の健全性確保のための資産リストラのバランスが難しいのですが、非効率なゾンビ企業となっている国営企業を放置しておくことは長期で見ると爆弾入りの雪だるまを大きくしているだけなので先行きは不安です。その中国の不良債権爆弾のXデーがいつか?という点は大きく気になるところで、この爆弾が爆発した時には対岸の火事では収まらずに世界中か信用と流動性のショックに陥ります。この事態はリーマンショックを上回ると予想され、リーマンショックの時にはまだ中国もアメリカもそれなりに体力がありましたが、当時の流動性確保のためのジャブジャブにばらまいた紙幣は悪い病巣を大きくしただけであり、今回は10年前の負の資産がより大きくなり帰ってくるかもしれません。
 
 
中国に関しては昨年の大きな出来事の一つとして香港での民主化デモが挙げられます。香港でのデモは当初学生の政治活動から発生していて現地でも若者とその他の市民とのギャップが存在し局所的でした。しかし活動が過激になるにつれて学生中心で局所的であったものから市内の中心部にまでデモがひろがり、街が壊されたり占拠されたり警察部隊と衝突したりと一般市民の生活にも影響が出始めました。
1997年のイギリスから中国への香港返還以来、中国政府は「1国2制度」を認めて運営してきましたが、民主化を弾圧し本土に取り込もうとする動きが加速されたところに一気に市民の不満と根強く存在する独立への行動が噴出し、潜在的な問題を浮き彫りにした形になっています。
香港には個人的にもよく行きますが、香港の人たちは中国公用語の北京語(普通語=プードンフワ)を話すのを拒否する人が多く今でもローカルな昔からの言語である広東語を話しており、お店や町で北京語で話すと少し嫌な顔をされます。これは想像でしかありませんが、中国の他のローカル地域でも香港まではいかないにしろ同じようなことが起こっていると推測され、広い中国の国内統治の難しさを垣間見ることができます。
香港自体は現在では経済規模も中国本土と比べて小さくなってきたため独立させてもよいのではとも思いがちですが、これを認めるともっと微妙な台湾やチベット、新疆ウイグルなども同調しかねないのでそれは中国共産党としても絶対に例外を認めるわけにはいきません。将来の大計画の「一帯一路」のためにも何とか収束させたいと画策しているはずです。
 
中国にとって本当に重要なのは香港の隣の台湾で、そこと関連付けて香港を見ています。香港は金融の中心部の一つでその機能は上海や深センの市場で今後カバーできますが、世界の半導体やメモリーのハイテク工場である台湾は絶対に手放すしたくないと考えています。新しい通信基準となる”5G”の技術で中国は世界をリードすることを考えており、現時点で中国製のファーウエイ製品は既にヨーロッパで一定のシェアを獲得しています。そして中国製でない欧米の競合製品も多くが台湾企業に製造を委託開発していることを考えると、この地域を取ることで圧倒的に有利な立場をとることができます。
 
これらの事情から、アメリカは対中国路線の一環として台湾問題を重要視しているはずです。実際推測の域はでませんが香港でのデモ活動を欧米が裏から支援しそれを台湾に飛び火させ、欧米が協調して台湾を独立させるというシナリオも可能性としては十分にありえます。
つい先日の2020年1月11日の台湾総選挙では予想通り中国本土からの独立を主張する欧米側の蔡英文女史が圧勝しました。これは習近平政権にとって大問題であり今後の有効な打ち手がないと、台湾が独立国家として認められ国連復帰もありうるかもしれません。
 
 
 
3)火種となった朝鮮半島、日韓関係の悪化
 
アジアで日本にとって問題のある国が近くにあと2つあります。北朝鮮と韓国です。
北朝鮮は近年ずっと核問題で世界とうまく行っていません。時折トランプ大統領とパフォーマンスで和解したふりをしていますが内容的には実態はなく、アメリカが求める「完全核放棄」についていったんは合意の姿勢を見せて握手したものの、その後ミサイルをたびたび発射しており大変危険な状態にあります。この北朝鮮が不安定な状態を不安視しているという点ではアメリカも中国も同じで、隣の中国からも金主席に対して自制を迫る声明が何度も平壌に届いています。
 
2019年に二国間で大きな問題となったのは韓国と日本です。これは近年では最悪の状態であり、逮捕された朴槿恵前大統領は比較的日本に対しても温和な態度で接したのに対し、現在の文在寅政権は逮捕された朴槿恵前大統領への反発もあり対日強硬路線を貫きました。結果として二国間貿易の一部制限と日本製品不買運動が展開され双方向での旅行客激減は国内の需要不足に悩む両国ともに経済的に打撃を与えています。
 
防衛面でも韓国側が日本に対して一時期、軍事情報保護協定(GSOMIA)の終了決定を通告したため(結果的には継続した)、日米韓の東アジアにおける防衛体制にもひびが入りかけ、中国やロシア、そして隣の北朝鮮が隣接するこの地域の安全面で不安材料となっています。最終的にはアメリカからのプレッシャーもありこれまでの体制を維持することになっていますが、今後隣の北朝鮮の動きや中国への経済依存が増すと韓国の世界の中での立ち位置はもっと難しくなってくると思います。
 
民族的に同じである北朝鮮と韓国は将来どこかで合併するという見方は以前から存在します。それを東西ドイツの合併と比較し穏便に行くことを周囲は期待する向きはありますが、今回は隣に中国とロシアという軍事強国があることを考えると、緩衝エリアとして存在していた北朝鮮が韓国と統合した後にアメリカ側につくか中国側につくかによって世界情勢が大幅に変わります。アメリカが孤立主義に向かうと東南アジアからも軍事的に撤退をしていくという流れになるものの、アメリカにとって最大のライバルである中国のおひざ元の朝鮮半島から撤退するということは避けたいと考えているはずです。というのも韓国は台湾と同様サムスンをはじめとするITの分野で強い国の一つであり「5G戦争中」の中国とアメリカ双方で確保したいと考えるのは自然です。
 
ところで、仮に韓国と北朝鮮が統合し中国側についたとすると日本の立場はどうなるのでしょうか?韓国・北朝鮮連合が「アメリカか?中国か?」で踏み絵をさせられたのと同様に、次は日本の番になるかもしれません。国際社会の中での将来の日本の役割を地政学的な視点からも考え、経済だけでなく防衛などトータルで日本は将来どうあるべきかというテーマは今考えなければならない問題です。
 
 
 
4)混迷するEUの行方は?そしてその時ロシアは?
 
ドイツのメルケル首相の2021年の退任が近づいてきました。旧東ドイツの出身者で物理学の博士でもある彼女のリーダーシップはヨーロッパ全体で長期間にわたって評価されてきました。しかし近年はドイツとEUに多くの移民を受け入れたころからEU内の不協和音が増え、ナショナリズムが台頭する中極左・極右政党が議席数を伸ばす国が増えてきました。
ドイツと並ぶもう一つのリーダーであるフランスのマクロン首相も「黄色いベスト」運動など市民のデモになやんでおり、就任時のスマートな口調は徐々に影を潜めて来ており、国内での人種問題や格差の問題に対処しきれず政治的地位を弱くしています。
EUからの離脱(ブリクジット)が国民投票で決まったイギリスは、離脱の時期や方法について全くまとまらずこのままだとハードランディングの結末をむかえそうで一番しらけているのはイギリス国民かもしれません。「もし」という言葉は歴史ではタブーですが仮にもしブリクジットの国民投票をもう一度行ったとすると、ほぼ間違いなく「EU残留」になるのではないでしょうか。
 
ドイツやフランスまでもがナショナリズムの波に飲まれており、中道左派・右派の議席数が減り極右・極左の政党が議席数を伸ばしています。EUの足並みを再度整えるためには、まずは経済をEU全体として立て直すこと、そして域内での雇用や所得のバランスをとること、各国が国内でも「規律」をもって政局を運営することなどが求められますが、現時点ではとても難しいようにみえます。
 
まずスティグリッツ博士や多くの経済学者の大家が指摘しているようにドイツの考える財政上の「規律」を守ったとしてもその国が良くなる確証がありません。より具体的に言うと財政赤字を減らすために国民が我慢して増税と失業の両方に耐えても良くならないなら、なぜそんなことをするか疑問に持つのは自然です。
そもそもEUの中でユーロという呪われたと思われている共通通貨を使うことの矛盾が一気に噴出して、各国の我慢もそろそろ限界に来ています。それに輪をかけるように米中貿易戦争があり中国との貿易で多くの黒字を出していたドイツさえも怪しくなってきました。さらにはメルケル首相退任にイギリスの合意なきEUからの離脱、イタリアの財政不安などが重なってくるともはや米中よりもこちらのほうが心配かもしれません。
実際問題ヨーロッパの主要国の銀行は不良債権を多くかかえており、欧州最大のドイツ銀行(約7000兆円デリバティブ保有)が大リストラ中で、他の国のトップ銀行もにたりよったりの状態です。
 
2014年のウクライナ騒乱以来、経済制裁に苦しむロシアは、周辺地域における他国同士の政治的利害を利用して巧みに自陣を増やそうともくろんでいます。既に20年近くトップにいるプーチン大統領は制度を巧みに利用し任期延長により独裁政治を行っていますが、このまま経済が低迷し続けるとさすがに国民の支持も徐々に失っていくと思われます。
 
経済構造上ロシアは原油や天然資源の価格が上がれば外貨の獲得はできますが、国内の工業化がすすまないとルーブル安と国内の失業を招き、資源や元の国営企業の母体を持つ一部の既得権益者以外は貧しい暮らしを強いられます。軍事的にはプレゼンスがあるものの天然資源頼みの経済では、どんどん才能が国外に逃げていき貧しい部分だけが残るという未来がちらつきます。
またロシアは原油天然ガスの輸出で稼いだ外貨で米国債を買っていましたが、近年はそれを金(ゴールド)などに代える動きが目立ってきました。貿易額の大きなロシアが米国債をどう扱うかで、欧米を中心とした金融界の信用や流動性も変わってくるのでこの動きも無視することはできません。
 
 
 
5)火種の中東の今後は?
 
2020年1月にいきなりアメリカがイランの影響のある指導者の一人であるスレイマニ司令官を殺害しました。これには世界中がびっくりし一時的に株式市場が急落し動揺を誘いましたが、その後はなんとか小康状態を保っています。日本がある極東にいると朝鮮半島や米中の争いに目が行きがちではありますが中東と東ヨーロッパは相変わらず火薬庫のように思えます。ロシアを盾に持つアサド政権によって発生したシリア難民の問題はEUの存続をも危うくしており、それらの間隙を狙ってロシアがこのあたり一帯の北側に勢力を固め始めました。
 
中長期で見れば自国でシェールガスとオイルが取れるようになったアメリカは、少しずつですが中東と距離を置き始めています。これまで原油を安定的に買ってきたスンニ派サウジアラビアとの関係も当然変わってくるでしょうし、そうなると対抗勢力であるシーア派のイランはロシアや中国などからバックアップを取りつけて新たなるパワーバランスを生み出す可能性があります。
アメリカと蜜月の関係であるイスラエルでは国内での政治体制が迷走しており、総選挙を1年で何度もやっている状態では防衛や外交もおぼつきません。サイバーセキュリティや軍事技術で強いこの国には最近中国資本が大量に入り込んできており、ベンチャーイベントなどでも中国企業の姿が多く見られます。
 
これまで中東というとイスラム世界のシーア派スンニ派が古くからの確執があり、ここに石油や天然ガスの経済利権と欧米の複雑な利害が状況を最悪にしているという状態でした。それを冷戦時には裏からアメリカとソ連が2つのサイドでそれぞれ支援して時折「代理戦争」の戦火を交えるパターンが多かったのですが、最近ではソ連の後継の軍事大国ロシアに加え、世界覇権を目指す経済大国の中国や、過去の帝国の歴史とプライドを持つトルコ(旧オスマントルコ)やイラン(旧ペルシャ帝国)が自分たちの時代の復活ののろしを上げ初めてもはや誰も将来を見通すことは難しいかもしれません。
 
似たような状況は中東だけでなく、旧ユーゴスラビアバルカン半島ウクライナハンガリーなどの東ヨーロッパと、さらにはカザフスタンウズベキスタンなど天然資源豊富な中央アジアなどにも見らます。現在ユーラシア中心部での勢力争いは、まるでオセロゲームのように白黒目まぐるしく変わりながら動いています。
 
 
 
 (参考)2020年各国の総選挙スケジュール
1月 台湾、スリランカ
2月 イラン
4月 韓国、シリア、セルビア
6月 モンゴル、アイスランド
12月 ルーマニア、エジプト、ガーナ
 
 
 
6)日本はどうする?
 
日本については2019年GDP成長率は0.7-0.8%程度と予想され(まだ出ていないので予想)、これは消費者物価上昇率とほぼ等しい数字になりそうです。インフレターゲットを2%に設定したのはかなり昔ですが今回も残念ながらそれには遠く及ばなかったし、それも「またか、、、」みたいに白けて見えるのはもう風物詩になりつつあります。
そもそもデフレ経済についての研究結果もないまま試行錯誤を続けていますが、個人的な意見としては資本の移動が自由の”閉じていない経済系”においてこれまでの理論による金融政策の枠組みで取り組もうというところに大きな論理的ギャップがあるように思えます。経済の理論に完全な解を期待するのは無理があることかもしれませんが、EUの金融・財政戦略の学術界での収束しない論争なども見ていると真実はまだ解明されていないと感じています。
 
日本の雇用面で見てみると相変わらず完全雇用を通り越した需給ギャップが存在する「売り手市場」が慢性化しています。これは失業率が高く雇用対策に頭を痛める海外の国々にとっては大変うらやましく見えるでしょうが、オペレーションが回らなくなってくると経済成長の足かせになるので思いのほか重要な問題です。
もう少し人材市場について観察してみると絶対数が足りないのではなく「使える」そこそこ「安い」人の数が足りません。実際に新卒採用を増やしている会社がミドル以降の社員に早期退職を促しているという例は多く、だったらその人たちに新卒の仕事をさせればよいのですが、その人たちのスキル、賃金とモチベーションは新しい配置転換にはなじみません。そういう意味では「数」の問題ばかりというよりは「質」や「習慣」の要素も大きく社会的に深い根を張ったやっかいな問題ともいえるかもしれません。
 
日本にとって2020年は東京オリンピックの年でもあります。多くの競技場のみならず商業施設や交通インフラなどもこれに備えてだんだん整ってきました。主要なインフラである鉄道や高速道路、空港などはある程度整っているので新規は少ないのですが、古い駅の建物や商業施設などは新鮮なトーンになってきています。
一般にはオリンピックがある時にはインフラ整備など需要の前倒しがあるため、終わった後の景気の反動が大きいと言われています。しかし日本の経済規模はGDPで世界3番目でインフラも整っていることを考えると、途上国ほどの経済効果はない半面、反動もそれほど大きくないというのが一般の意見です。自分の意見も同様ですが、今回の開催により多くの外国人が初来日して多くがリピーターになることを考えれば経済的にもプラスの要素がかなりあると思います。
 
近年インバウンドの観光に力を入れてきた日本は2019年には訪日外国人の数は2018年に続き3000万人を超えました。昨年は日韓関係の冷え込みから韓国からの訪問者が大幅に減ったにもかかわらず全体としては増えており、10年前の2008年の約800万人と比べると約4倍になっています。
訪日観光客はリピートする割合が比較的高いのでオリンピックを機に新たに来た人たちがその後また来訪することを考えると日本の観光産業にとって大いにプラスであり人口減少による需要の伸び悩みを一部補うことになるでしょう。我々は訪日する外国人に対して暖かく接することで、日本にいながらグローバル時代の経済的恩恵を受けることができるということは、なかなかすてきなことではないでしょうか?
 
もう一つ日本について最近のニュースですが、学業成績を図るPISAランキングの上位常連から「読解力」の部門で大きく順位を落としました。今回のランキング上位は中国とシンガポールで、その他に東南アジアや北欧の国々が入るのですが「読解力」だけ日本は大きく順位を落としました。中国とシンガポールが上位に行く理由は身近に見ていてよくわかるのですが、とにかく競争が激しくよく勉強しています。成長期の子供の時にここまで家の中にこもって勉強ばかりしていると体が弱くなって将来困るのでは?と心配しているのですが、少なくともPISAの学力についてはランキング入りは当然の結果に思えます。実際に仕事をしたりする上ではPISAのランキングはある程度は相関があると経験的に感じており、特に言われたことを言われた通りしっかりこなす、という点では学力は見分けやすい指標であり、これこそが古代中国の「科挙」で目指した姿でしょう。
しかしながらこれがビジネス、その他の分野で全ての能力かといえば全くそのようなことはなく、創造力、リーダーシップ、協調性、行動力など勉強では測れない要素もたくさんあり、それらの分野の確立とそれのトレーニングによって多様性のある才能を開花させることは可能だと信じています。
 
もう一転教育についてのネガティブな情報は、日本の教育費の低さはOECDの国の中でも最低レベルでこれは早急に取り組むべき問題です。シニアが増えてきてそちらに予算を使わなければいけない状況ですが、そのつけを子供たちや将来に回してはいけません。歴史を見れば国の教育投資が長い目で見てどれだけ有効であるかは明らかなので、早く何か具体的な手を打たなければなりません。
 
学業の教育だけでなく社会人になってからの新しい知識や技術の取得も大切になってくると思います。日本では近年「リカレント教育」という言葉を用いて生涯を通じていろいろな学びをしていこうという動きがありますが、これは大変重要です。というのも技術やシステムがどんどん新しくなり世界での人材の流動性が高まり、情報やノウハウもインターネットで瞬時に伝わるようになれば、島国とはいえマイペースにやっていると確実に後れをとります。
 
個人的に職業がら多数の若者と世界各地で出会っていますが、人口が多く競争の厳しい中国やインドでは才能が日々切磋琢磨して磨かれています。彼らの多くは本当にハングリーで国を超えてチャンスを求めています。そういう中で「売り手市場」に甘んじてチヤホヤされることに慣れてしまうと、いつしか周回遅れになってしまい気付いた時には後進国になってしまったということにならないためにも、現状をしっかり理解して目的意識をもって日々切磋琢磨していくことがあたらめて大切だと思います。
 
 
以上長くなりましたが2020年新年の今年に向けた雑感でした。
 
 
。。。(2020/1/13)